「市長に就任してまだ3か月目の時でした。SNSやネットではデマがあふれていた。あのとき、私に何ができるかと考え、錯綜する情報を一つ一つ確認して、正しい情報に訂正する作業を続けました。正確な情報を伝えることが必要だと痛感しました。

 そして福岡市からも職員を送り、震災後に何がどんな順番で起きるのか、どんな対応が必要なのかの課題を役所全体で学んだし、避難所の運営マニュアルも大幅に改善していきました。今回、熊本市に最初に派遣したのは東日本大震災当時の防災・危機管理部の職員で、避難所支援もマニュアルが非常に役に立った。

 実は、災害対応の初動に必要な消防、水道、ゴミ収集の機能を備えているのは県でも国でもなく、基礎自治体なんです。だから近隣の自治体、特に政令市である福岡市がまず動かなければならないと考えました」

 高島氏の行動は、役所の常識からすると掟破りの“超法規的措置”の連続だ。SNSでは、福岡市に一時避難する被災者に〈市立の小学校は住民票を移さなくても転校を受け入れる。教科書も無料で提供します〉と発信。さらに行政区分を超えて福岡市のゴミ収集車で現地のゴミを集めた。

 当然、役所だから「それはやれません」と抵抗があることも考えられる。

「私は、普段から『何もしない人の、何もしないための批判』は聞かないんです(笑)。また、市長に就任して6年間、国家戦略特区など、スピード感を持って、多くの新しいチャレンジをしてきましたから、職員も驚かなくなっているんじゃないですか(笑)。

 今回も特に、職員には『今は平時ではなく有事だ』『できることはすべてやる』ということを最初に意識づけましたし、視覚でも認識できるよう、私も幹部も毎日、防災服を着て、庁内の会議でも、起立・礼など規律をしっかり持たせました。災害支援というのは、受け身の姿勢で言われた仕事を、ただやるだけでは絶対にできないんです。課題に対して能動的に動く意識と緊張感が大切なんです」

【PROFILE】1974年、大分生まれ。1997年、KBC九州朝日放送に入社。ワイドショーや環境番組のキャスターを務める。2010年12月、福岡市長就任。現在2期目。

※SAPIO2016年7月号

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