芸能

『トットてれび』で向田邦子演じるミムラ 壮絶役作りで憑依

番組公式HPより

 ドラマを観ていて、役者の魅力に思わず引きこまれた経験は誰にでもあるはずだ。その背景を調べてみることも楽しみ方の一つ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 ミムラって、いったい何者? 番組を見て、そう感じた人は私だけではないはず。

 NHKの土曜ドラマ『トットてれび』(土曜20:15)は、黒柳徹子の人生を軸に昭和の時代をイキイキと描き出している。黒柳の友人の向田邦子を演じたミムラさん。役者として「演じていた」のだけれど、その横顔はある瞬間、たしかに実在した向田邦子そのものに見えていた。

 そこに向田邦子が座っている。憑依している、乗り移っている。それくらい、実在のイメージと役者とが、ぴたり重なっていた。

 向田邦子はご存じ、『あ・うん』『阿修羅のごとく』『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などを書いた人気脚本家で直木賞作家。突然の飛行機事故で命を落とした、その数奇な人生。亡くなった後もたくさんのファンを惹きつけ続けている。

 だから、向田邦子という人と直接知り合いではなくても、その人となり、雰囲気、言葉の感じ、質感、匂いのようなものを、多くの読者・視聴者は感じとってきたし共有してきた。

 そうした「誰もが知っている有名人」を演じることほど、難しいことはない。役者が勝手なイメージを作りあげてしまえば反発されるし、単に容姿や外見を真似ようとしても、その人そのものには見えてこない。人の気配、漂わす匂いや雰囲気は、なかなか醸し出せない。

 しかし、ミムラは違った。立ち上ってくる気配を実に見事に再現していた。

 演技の天才? ひらめき? 演じる技術の高さ?

 ドラマで主役・黒柳徹子を演じる満島ひかりならば、「成り切ってしまう天才役者」の一言で片付けていいだろう。実際、満島も黒柳徹子になりきっている。でも、ミムラって、満島ひかりとはまったくタイプの違う役者ではなかったでしょうか?

 今回ミムラが演じた向田邦子は、いったいどんな風に生まれてきたのか? その謎を探ってみたらやっぱり……役作りで、とんでもない努力を重ねていたのだ。

 向田邦子のファンでもあり猛烈な読書家でもあるというミムラは、向田邦子の手書き原稿を参照して、その文字のクセ、筆致を猛勉強して習得していった。練習で300枚を超える枚数を書きまくり、「文字の癖、間違えた時の修正の仕方、時代で変わっていく原稿の使い方などを把握していきました。撮影でもオリジナル原稿通りに書きます。基本的には一つも我流で変えていません。ここまでは役に入るためにも必要かな」(ミムラの公式サイト「MIMULALALA 」)

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン