モハメッド・アリ対アントニオ猪木の異種格闘技戦が話題になるのは日本だけだ。世界各国では、アリの素晴らしいキャリアに汚点をつけた奇妙で退屈なイベント、という程度にしか思われていない。
しかし、世界最大の格闘技団体UFCを筆頭とする世界中のMMA(総合格闘技)プロモーションが、この試合の影響下にあることは誰も否定できない。2014年4月、アリはツイッターに、自分が猪木の足をつかんでいる写真をアップした。
「どう思うダナ・ホワイト? モハメッド・アリこそがMMAファイターの元祖じゃないか?」
UFCの代表ダナ・ホワイトはこう答えた。
「あなたこそすべての元祖であり、いまの格闘技があるのもあなたのお蔭です」
●やなぎさわ・たけし/1960年東京生まれ。文藝春秋に入社し、『週刊文春』『Number』編集部などを経てフリーに。主な著書に『1976年のアントニオ猪木』『1964年のジャイアント馬場』など。近著に『1974年のサマークリスマス』がある。
※週刊ポスト2016年6月24日号