子供が10才くらいになるまでは子供との関わりが重要で、特に愛着形成が活発な生後半年~2才までは、子供だけに注意を向けることが重要だという。
「なぜかというと、生後半年~2才は、子供の健全な人格を作る『オキシトシン』というホルモンの受容体が最も増える時期だからです。その期間を過ぎてもある程度は補われますが、最初に極端に少なくしかできていないものを、後からたくさん補うということは非常に難しいのです」
親と子の関わりによって作られるオキシントンには、安定した絆・愛着を形成し、社会性や共感性を育くみ、ストレスや不安を和らげる働きがある。
「オキシントンの働きが弱いと、不安が強くストレスを受けやすくなる上に、健康にも関係し、寿命も左右されるのです。対人関係も築きにくく、大人になってパートナーと安定した絆を形成しにくかったり、子育てがうまくできなくなります。それほど重要な時期をスマホに邪魔されることは、我が子の将来までも損ないかねないリスクを孕んでいるということです。これほど便利なものは人類の進化に組み込まれていなかったため、無抵抗に影響を受けてしまうのです。人類にとって想定外の脅威と言えます」
実際、社会全体に共感性の低い人は増えており、ますます人間関係の希薄な社会となることが危惧されている。
「共感能力が未発達な傾向は、既に大人になっている人にも見られます。そこへ、さらにスマホネグレクトされた子供たちが育ったときにどうなるのか。そのツケは結局、育てた親にも返ってくるのです。親に対して無関心になり、親が年を取って弱ってきても、子供はスマホや他のことに熱中していて、それこそ息が止まりかけていても気がつかないかも知れない。そんなふうに親子の情愛自体も薄くなってしまうのは仕方の無いこと。本当なら子供に注ぐべき細やかな愛情が、他のものに移ってしまうわけですから。
子供が成長するにつれ、徐々に離していって関わりを持ちすぎないことも大事ですが、10才くらいまでは、子供としっかり関わってあげることがとても大切なのです」