ビジネス

タカタ「欠陥エアバッグ」 創業家支配が業界に残す爪痕

エアバッグの改修費用は1兆円に及ぶ予測も(写真:アフロ)

 三菱自動車やスズキの燃費不正問題、そして、英国のEU離脱による影響が懸念されるなど、逆風が吹き荒れている日本の自動車業界。だが、それにも増して大きな懸案事項が手つかずのままになっている。タカタの「欠陥エアバッグ」問題だ。

 現在までに、タカタ製のエアバッグが車内で異常破裂する事故は世界中で約100件報告され、米国ではエアバッグ部品の破片が当たり10人が死亡、国内でも1人が大ケガを負う惨事に繋がっている。

 事故原因と見られているエアバッグインフレーター(膨張装置)のリコール(回収・無償修理)対象は追加に追加を重ね、このままいくと、世界で1億個以上のリコール、対策費用は何と1兆円規模に膨らむとの試算まで出されている。

 経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。

「今のところリコール費用は車メーカーが立て替えている状況で、今後、各社が個別にタカタと責任割合を協議し、かかった費用の負担を求めていくことになります。しかし、タカタはいまだに根本原因が究明されていないとして、専門機関に調査を依頼している状況。金額の交渉は一筋縄ではいかないでしょう」

 タカタにとっては費用分担の額が大きくなればなるほど、会社存続の危機が迫る。自己資本は1200億円あまりなので、債務超過を免れるためには車メーカーの“妥協”を引き出すしか方策がないのだ。

 もちろん、経営の立て直しを支援するスポンサー企業の存在も欠かせなくなるだろう。すでに米国の投資ファンドや大手エアバッグメーカー、中国の自動車部品メーカーなど約30社が出資に前向きな姿勢を見せているというが、決して先行きは明るくない。

「どんな部品メーカーやファンドが救済するにせよ、ここまでイメージが悪くなったエアバッグ事業はタカタブランドのままでは続けられない。スポンサー企業はシェア拡大目的で生産設備だけ利用するか、もしくは顧客情報だけ引き継いだ後にエアバッグ事業を切り離し、シートベルトやチャイルドシートなど、その他の事業で利益を上げる組織に変革するかのどちらかだろう」(業界関係者)

 切り捨てられるのは事業ばかりではない。タカタは創業家の3代目である高田重久氏(50)が会長兼社長を務める典型的なオーナー企業。さらに、重久氏の実母である暁子氏(76)がいまだに社内外で“ゴッドマザー”と呼ばれるほど権力を握っているとされる。

 こうした高田家の独裁体制が、経営立て直しのネックになっていると指摘する向きは多い。

「当初、タカタを救済すると見られていた自動車メーカーがどこも名乗り出ないのは、高田家がいると経営に介入しづらいから。事実、今回のリコール問題でも、強硬姿勢で話し合いに臨む重久氏の態度に各社の首脳陣は怒り心頭。スポンサー候補の中には、高田家の退陣を支援の条件にしようとしている企業もある」(自動車ジャーナリスト)

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」