ビジネス

コメダ珈琲上場 流行りを追わずに利益を出す綿密な戦略

昔ながらの喫茶店スタイルで成長続ける「コメダ珈琲」

 飲み物を注文すると、分厚いトーストやゆで卵などが無料でついてくる──。名古屋発祥の喫茶文化、モーニングサービスを売りに全国で682店(4月末時点)を展開するまでに成長した「コメダ珈琲」。その運営会社であるコメダホールディングスが、6月29日に東証1部に上場する。

 コメダの創業は1968年と古いが、急速に出店攻勢をかけ始めたのは2000年代後半になってからだ。当時はドトールやスターバックスなど、いわゆるセルフ式のコーヒーチェーンが全盛を誇っていたため、コメダのような“昔ながらの喫茶店”は縮小の一途だった。

 では、なぜコメダがここまで規模を拡大させることができたのか。飲食業界のニュースサイト『フードスタジアム』編集長の佐藤こうぞう氏が分析する。

「コメダの経営は創業者の引退後、投資ファンド(現MBKパートナーズ)が行ってきたので、じつに綿密なマーケティング戦略のうえに成り立っています。ファンドと聞くと、目先の利益ばかりを追っているイメージがありますが、コメダは違います。

 10年、20年先の市場構造を読み、これからの外食産業は時間とお金を持て余している団塊世代を主要なターゲットにしなければ生き残れない。そこで、彼らシニア世代が“どこかホッとする”スタンダードな店づくりを軸に現代風のアレンジを加え、ホームランを狙わずに小さなヒットを打ち続けるスタイルを定着させていったのです」

 佐藤氏はこうした外食業界の潮流を、「老舗の歴史やストーリーを逆算して考える“ネオ・スタンダード”な業態づくり」と捉えている。

 確かにコメダは、ログハウス調の店内にレトロ感漂うソファ、そこでコーヒーを飲みながらミックスサンドやピザ、ハムサラダなど気取らない食事を取る。シアトル系カフェに行き慣れた若者にとってみれば、「カッコ悪い」と映るかもしれない。だが、それこそがコメダの強さの秘密なのだ。

「ライバル店が出てくると、もっと商品を増やしてクオリティーを上げようとか、もっとお客さんを喜ばそうと小細工しがちですが、コメダは敢えて流行りを追わず、メニュー構成もほとんど変えていません。

 だからこそ、高い利益率を維持し続けることもできますし、何よりお客さんに『いつ行っても変わらない安心感』を与えることができるのです。いま、こうした長く続く店づくりは繁盛店オーナーのセオリーになりつつあります。『鳥貴族』に代表される大衆酒場もそうです」(佐藤氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン