ライフ

【著者に訊け】東山彰良氏 直木賞受賞第一作『罪の終わり』

2015年に『流』で直木賞を受賞した東山彰良氏

【著者に訊け】東山彰良氏/『罪の終わり』/新潮社/1500円+税

 その出来事の前と後とで、世界が一変するほどの事件や災害。東山彰良氏の『罪の終わり』でいう〈六・一六〉もまた、新たな救世主が待望されるには十分すぎる災厄だった。

 舞台は22世紀のアメリカ大陸。2173年6月16日、〈ナイチンゲール小惑星〉落下に伴う地殻変動や気温低下で食糧事情は逼迫し、東部政府は全長900kmに及ぶ〈キャンディ線〉以東に保護を限定、それ以外の地域では〈食人〉すら常態化する極限状況に陥った。

 本作では台湾に生まれ、米国人夫婦の養子となった〈ネイサン・バラード〉を話者に、彼が六・一六後の世界に君臨する〈ナサニエル・ヘイレン〉と、稀代の食人鬼〈ダニー・レヴンワース〉の行方を追った日々を振り返る。〈白聖書派教会〉から2人の処分を命じられた彼は、ナサニエルの謎に満ちた生涯を書き綴り、読者はその評伝を読むという形を取るのである。

 なぜ一介の不幸な青年が〈黒騎士〉として崇められ、信仰の対象となり得たのか。神話にはそれを求める時代と、絶望が必要らしい。

 実はナサニエルの名は、『ブラックライダー』(2013年)に既に登場している。六・一六から数十年、その名も「ヘイレン法」が食人を公に禁じた世界に暗躍する黒騎士の、初代の名として。

「そこでは伝説の男として登場する程度ですが、僕自身がナサニエルのことをもっと知りたくなって、実は直木賞を頂いた『流』が出る前には初稿を書き上げていました。受賞作との違いに驚く方もいると思いますが、作家は誰しも自分が読みたい物語を書いている部分があるし、フィクションとして純粋に楽しんでいただければ、それで十分です」

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン