アイドルの集客力は高く、平日の夜や、週末の午前中など、集客が難しい時間帯でもお客さんを動員することができます。一般には知名度のないアイドルでも、少ないながら必ずチケット購入するお客さんを呼べるのです。そのため最近では、多くのライブハウスが、スケジュールが埋まりづらいこれらの時間帯をアイドルイベントに貸し出しています。また、チケット代が他ジャンルのライブと比べて高い傾向にあり(2500~3500円程度、バンドの場合は1000~2000円程度)、万が一、観客が少なくても赤字になりづらいのです。同じ理由で、ロックフェスよりも、アイドルフェスほうが、運営しやすいのでしょう。
そして、アイドルファンの特性が、不安定なイベントでもある意味「成功」にしてしまうことも、アイドルフェスが増えている理由のひとつでもあります
アイドルファンには、平日の仕事終わりの疲れや、週末の早起きの辛さなどを、即座にふっ飛ばして楽しむ能力が備わっています。イベント前に休養をとらずとも、素早く切り替えられるのです。また、物事を多角的に見て面白がることができるため、5月末の淡路島で起きた困難な状況下でも、不備や不具合を面白がって笑い飛ばせるのです。私は8年ほど地下アイドルをしていますが、どんなアクシデントが起きても、ファンの人が「つまらない」と言うのを聞いたことがありません。
アイドルファンの熱心な応援(大きな掛け声やヲタ芸)が、他ジャンルのミュージシャンのファンから怖がられたこともあり、野外フェスでは自粛していた時期もあります。表に出ると目立ってしまう存在であることを自覚しているからこそ、彼らはどんな状況もアイロニカルに笑えるのかもしれません。
淡路島のアイドルフェスも、果敢に現地へ向かったアイドルファンによって面白おかしくツイッターで実況され、話題になりました。通常の野外フェスだったら大問題になりかねなかったフェスが「伝説」と揶揄されるに留まったのです。もし来年以降も開催を続ければ、本当に初回が伝説になる可能性もあるでしょう。
しかし、アクシデントもイベントの醍醐味と言っていいのは、アイドルを応援し仲間を思いやって楽しむことができるファンにだけ許されるものです。特に、笑えないような、手抜きだらけの愛のないアイドルフェスだけは増えないでほしいです。