この“警察憎し”でクビを切られたのが日本の警察大学校留学経験者で知日派として知られる金碩基氏。今年4月の総選挙で当選し、国会議員になって名誉回復を果たしたが、警察首脳OBの政界進出は久しぶりだ。日本経験を活かした警察イメージ回復への役割が期待されている。
韓国社会の法治無視は日本非難なら何をやってもいい「反日無罪」「愛国無罪」で象徴される。例の日本大使館前の慰安婦像はその典型である。慰安婦団体が歩道上に勝手に設置した無許可施設で、かつ外国公館への侮辱という国際法違反にもかかわらず、誰も手がつけられないでいる。
大使館前の不法集会・デモも日本大使館前だけは黙認、放置されたままだ。直近の違法風景では、学生らが「慰安婦像を守れ!」と歩道上にビニールテントを張って寝泊まりしているが、こんな法治無視は世界でも珍しい。
慰安婦像の周囲にはいつも大使館警備の警官がいる。彼らは写真を撮ろうとする日本人観光客を必ず誰何する。日本人がいたずらをしないか、慰安婦像を守っているのだ。法治どころか逆に警察が不法を保護している。慰安婦像問題は「韓国は法治国家か放置国家か」の試金石である。
文/黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)
【PROFILE】1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。
※SAPIO2016年8月号