2010年、永さんはパーキンソン病と前立腺がんを患っていることを公表。それでも、治療とリハビリのかたわら、仕事は継続してきた。
今年2月、永さんの最後のテレビ出演となったのは、親友・大橋巨泉(82才)とともに訪れた『徹子の部屋』(テレビ朝日系)だった。大橋も過去4度のがん手術などで、体重は30kgも減っていた。永さんは車椅子で膝の上にはブランケット、口は大きく開いたまま。そんな3人の共演は大きな感動を与えた。
永さんの実家は浄土真宗の最尊寺。生花店に花があるように、鮮魚店に魚がいるように、幼い頃から永さんの日常には「人の死」があったと、常々語ってきた。
「『生老病死』ってよく聞くでしょう。この4つの字の中に人生が全部入ってるんです。つまり、生きること、老いること、病と死。こんな見事なお経はないと思うんですよ(中略)いずれ年老いる、老いれば、いやだといっても病気になり、病気になれば死を待つ」(女性セブン2013年1月1日号インタビュー)
病気から逃げなかった。パーキンソン病には、歩行時に前傾してしまうという特徴がある。若い介護士に「『上を向いて歩こう』という歌があるのをご存じですか?」と聞かれた時、「知らない」と笑い飛ばし、介護士と一緒に歌いながらリハビリをしたこともあったという。
『話の特集』の元編集長で、60年にわたって永さんと仕事をともにしてきたフリージャーナリストの矢崎泰久さん(83才)は、永さんとの最期の日々をこう明かした。
「永さんは6年くらい入退院を繰り返していましたが、ここ数か月は本当に具合が悪かった。4月にお見舞いに行ったときには、点滴や管がたくさんつながった腕を上げて挨拶してくれてね。手を握ったら涙がこみ上げてきて、2人しておいおいと泣き合いました。永さんとの60年の日々が甦り、2人の中で何かが繋がった、と思える時間でした。訃報を聞いてすぐ、ご自宅に行くと、永さんは本当に安らかな顔でベッドに横たわっていました。すぐそばに腰掛けて“ありがとう”と言葉をかけました」
※女性セブン2016年7月28日号