「波瑠さんは主役でもヒロインでも、前に出すぎる演技をしないんです。例えば、あさはガツガツしたキャラでありながら、上品さや立ち姿の美しさ、彼女の魅力や引き算の演技でうるさくならない。良い意味で“これが私”という主張やクセがなく、いろいろな役に振り切れる。だからこそ、作風や視聴者層が違うドラマで支持されているのだと思います」
通常、若手の役者は人生経験も演技経験も浅いため、例えばトラウマを抱えた役はできても朝ドラ主人公のような元気な役は苦手だったり、ラブコメはできてもシリアスはできないなど得意が偏るもの。その点、どんな役もこなせる波瑠は、同世代の女優と一線を画していると木村さんは評する。
「映画化とドラマ化された『恋空』で、片方ではヒロインの味方、片方では敵という真逆の役を難なく演じ分けていて、その頃から女優としての資質が出ていました。これまでに100近い作品に携わっただけに、25才という年齢以上に完成度が高く、いつブレイクしてもおかしくありませんでした。どんなジャンルの作品に出ても、今一番視聴率が取れる女優さん。まだまだ快進撃は続くと思います」
そんな波瑠の人気や実力をもってしても予測できないのが視聴率。今回の火曜22時は、ドラマが2つ重なる不利な枠でもある。
裏番組の『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)は真逆路線の漫画を原作とした不倫ドラマで、滝沢秀明と武井咲の“禁断愛”を描く。甘いラブシーンやベタな展開にハマる人も続出している一方、波瑠のドラマもグロテスクな描写があるだけに「怖いけど面白い」とそれぞれ違う路線で視聴者を掴み、初回視聴率は、波瑠ドラマが9.6%、滝沢ドラマが9.3%と引き分けた。
「ドラマの視聴率はライバルがいることで2~3%、多くて5~10%変わってくるので、ヒットの指標を視聴率でみると厳しいですが、『ON』は毎話、過激な殺人者が出てくる話題性や、背景に彼女が抱えるトラウマが明らかになっていく大きな流れもあるので、前クールの『僕のヤバイ妻』のような盛り上がり方になりそうです。
『せいせいするほど、愛してる』は、『ダメな私に恋してください』のような漫画原作らしいライトな純愛を期待しますが、題材が不倫という矛盾があるので敬遠する人が多いかもしれません。これまで『サイレーン』や『ヤバ妻』など、火曜22時は女性のサスペンス枠として固定ファンが生まれつつあるので、『ON』の異常ぶり、怖さはネットでの盛り上がりが期待できそうです」