ライフ

「老害」という罵倒語を安易に使うべきではない理由

誰にでも豊かな老後が待っているわけではない(写真:アフロ)

「老害」という言葉を口にする人がいるが、それは高齢化社会における本当の問題を見えにくくしている。いま真剣に考えなければならない問題は何か。コラムニストのオハダカズユキ氏が考察する。

 * * *
 ネット上でも日常でも、よく目にしたり耳にしたりする「老害」という言葉。自分が「若者」から遠ざかり、「老人」に近づきつつある中年だからかもしれないが、それを軽口で使う者はほんと浅はかだと思う。

 生産しないのに消費する。働かないのに医療や介護などの金がかかる。長く生きてきたぶん物知りどころか、情報技術社会に追いつけない面倒くさい落ちこぼれ。そのくせ頭が固くて、後進に道を譲ることもしない。公共マナーだって、謝れないし、勝手にキレるし、迷惑かけているのは若者じゃなくて老人のほうだろう。こんな老害社会、もう、うんざりだ!

 というアレコレの言い分を全否定はしない。「団塊世代(1947~1949年生まれ)がひどい」ともよく言われる。たしかに、60代後半には、中年の私もときおりムカッと来る。いい歳こいてオレがオレがと自己主張の強い老人が多いし、思いっきり既得権の甘い汁を吸いながら気分は反権力みたいなことをヌカしている老人も少なくない。ああいう連中を「老害が!」と斬って捨てたい気持ちはよくわかる。

 しかし、である。人は誰しも同じペースで齢を重ねるのだ。死ぬまで全員、老いていく。歳をとれば、働けなくなるし、身体が弱るし、思考力も落ちて、どうしたって頑なになってしまう。

 そういう存在に誰もがいつか成り果てるのである。今の老人の醜さは未来の自分の姿にすぎない。それを「老害」と斬り捨てた刃物はブーメランのように、〇〇年後の自分を斬りつけに戻ってくるのだ。

 だから「老害」などという罵倒語は、安易に使うべきではない。軽々しく口にしたり書きこんだりするのは浅はかだ。そして、老人たちを「老害」視することによって見えなくなる事実がある。世代間対立の図式でものを考えると、ほんとうに唾棄すべき「敵」を見失いかねないのだ。

 先日、博報堂生活総合研究所が60~74歳を対象に実施した意識調査を発表した。1986年から10年おきに実査してきた調査の4回目の結果である。

 それによると、「何歳まで生きたいか」の問いに、86年の調査対象者たちは平均で「80歳」と答えたが、2016年の今年は「84歳」だったそうである。また、今年から新たに加えた質問の「あなたの気持ちは何歳くらいだと思いますか」の答えは、平均「53歳」。実年齢より14歳マイナスだった。「自分は、体力もあるし、気持ちも若い」と答えたのは、65歳~69歳が一番多くて、30%。団塊世代、やっぱり健在である。

関連キーワード

トピックス

優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン