同じく農産品で注目すべきは、愛知県南端の渥美半島に位置する田原市(同12%)だ。中京大学経済学部客員教授でエコノミストの内田俊宏氏が解説する。
「全国的な知名度は低いが、隠れた『農業王国』です。豊川用水を潤沢に利用して広い農地にスプリンクラーを常設するなど設備も充実し、管轄のJAあいち南は全国有数の生産量を誇る。農家の所得水準は非常に高く、レクサスや高級輸入車に乗るリッチな農家が多い」
田原市は温暖な気候に恵まれ、キャベツ、レタス、トマト、菊など多くの農産物が産出額全国上位を占める。「あつみ牛」「常春ビーフ」などのブランド肉を生産し、養豚やうずら卵の産地としても全国有数だ。2005年と2006年には市町村別の農業産出額で全国1位に輝いている。
その田原市がある愛知県は地方都市ベスト58のうち3割近くを占める。まさに「ひとり勝ち」のエリアだが、やはり「あの企業」の力が強いようだ。
「好調な愛知県を牽引するのは豊田市に本社のあるトヨタ自動車です。県内各地に社員が住むほか、トヨタ系の部品工場や生産工場が分散しており、世帯収入を押し上げると考えられます。みよし市(同13%)、日進市(同12%)、長久手市(同9%)などは名古屋市内へのアクセスがよく、製造業以外の高収入者も一戸建を買って住んでいます」(内田氏)
※SAPIO2016年8月号