芸能

藤原竜也『そして、誰もいなくなった』 満足度トップの理由

番組公式HPより

 視聴者がネットを通じて随時ドラマの印象を語り合うのはもはや当たり前の時代だ。そのせいもあって、制作側の「予定調和」は通用しづらくなっている。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 いよいよ夏ドラマも中盤へ。どのドラマが人々の関心を惹きつけているでしょうか? 視聴率トップは……『家売るオンナ』(日本テレビ系水曜午後10時)。しかも、4話連続で二桁キープは、なんとこのドラマ1本だけとか。結婚したばかりの北川景子さんが主役。以前にも増してのびのびと、強く美しく輝いています。

 では、夏ドラマのスタート時の視聴者期待度は? データニュース社「テレビウォッチャー」(調査対象全国3000人)アンケートによれば、「初回」の満足度トップは藤原竜也主演『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系日曜午後10時30分)。

 このドラマに多くの人が期待を寄せていたことはたしか。では、中盤へ向けてはどうでしょう? 残念ながら、なぜか『そして、誰もいなくなった』の視聴率は少しずつ低下中。でも、私個人としては失速どころか、めくるめく展開に引き込まれたまま。速度感に満ちたスリルな世界に目が離せません。

 主人公はコンピューターシステム開発会社の優秀な社員、藤堂新一(藤原竜也)。仕事も順調で結婚も決まり幸せな生活のさなか。同姓同名の「藤堂新一」が逮捕されるという不可思議な事件が起こり、順風満帆な人生は一気に崩壊へ向かって走り出す。折りしも「マイナンバー」導入というこの時期。個人が記号で仕分けされるという現実の中で、もし自分のナンバーが乗っ取られたら?

「私とはいったい誰なのか」という骨太なテーマを軸に、周囲の裏切り、唐突な自殺、見えない企み……ぐいぐいと引き込まれるこのドラマ。見所を、3つあげてみると。

●その1 配役の絶妙さ

 藤堂新一を演じる藤原竜也は、スリリングな展開にドンピシャの役者。10代のスタート地点から蜷川芝居という逃げ場のない舞台で磨かれてきた人だけに、ここぞ、という場面で全身の力を込めて叫ぶ。その瞬間、画面がギュッっと引き締まる。

 テンションの高さ、緊張感、集中力はズバ抜けています。ふと、藤原さんが甘いマスクを持っていることなんて忘れさせてくれるくらいの迫力。

 一方、主役を取り巻く配役のバランスの良さも注目です。藤堂の同窓生には玉山鉄二、今野浩喜、ミムラ。3人をラインナップするあたり、役者好きにはたまらない。玉山さんは、冷血なエリート官僚役。ぴくりとも表情を動かさない。ハンサムなその横顔をまるで彫像のように静止させ、よけいなセリフを吐かず佇む。という演出から、玉山さんの魅力がじわり滲み出てくる。

 対照的なのが、お笑い芸人出の今野浩喜さん。すぐ身近にいそうな庶民的風貌だけれど、実は芸は細かく演技的感覚の冴えた役者。と、まったく違うタイプの二人を配置した上で、もう一人の同窓生を割り込ませる。それが、謎めいた元恋人役のミムラさん。透き通った美貌の奥に、何か得たい知れないどす黒い闇が広がっていそうなキャラを、見事演じきっています。

 弁護士役の鶴見辰吾、藤堂の上司にヒロミ、婚約者には二階堂ふみ……多種多様な配役がメリハリを生んでいます。バーテンダーにはHey!Say!JUMPの伊野尾彗くんを抜擢。いつものチャラさ封印して、役柄によくはまっています。

 そう、「さまざまなタイプの役者を見る楽しさ」がこのドラマには溢れているのです。

関連記事

トピックス

羽生結弦が主催するアイスショーで、関係者たちの間では重苦しい雰囲気が…(写真/AFLO)
《羽生結弦の被災地公演でパワハラ告発騒動》アイスショー実現に一役買った“恩人”のハラスメント事案を関係者が告白「スタッフへの強い当たりが目に余る」
女性セブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
『ここがヘンだよ日本人』などのバラエティ番組で活躍していたゾマホンさん(共同通信)
《10人の子の父親だったゾマホン》18歳年下のベナン人と結婚して13年…明かした家族と離れ離れの生活 「身体はベナン人だけど、心はすっかり日本人ね」
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン