●その2 3D的脚本のスリル感
オリジナル脚本の担当は秦建日子(はた・たけひこ)氏。劇作家・つかこうへいに師事し、小説「推理小説」「アンフェア」等数々の作品でヒットを飛ばし、映画監督に舞台と、テレビドラマ外の領域も幅広く手がけている人。(ついでながら父上は作家・秦恒平)
3D的立体感に満ちた脚本、幾重にも張られた伏線、謎と謎とが交叉し、突然接点を見せたり、すれ違ったり。いきなり本筋に絡んできたり。異なる場面、キャラクター、出来事を突き放したりつなぎ合わせたりしながら、スピーディーに展開する手さばき、さすがです。
散乱していく謎。バラバラの謎がいったいどうやって一つに組み立てられ、建築物のようにして結末が姿を現すのか。期待が膨らみます。
●その3 東京の街角への愛が滲むロケ
あ、あそこは神田の万世橋付近のレンガの壁だ。あ、あれは吉祥寺の古いマンションだ。東京出身者としては、見知っている場所が次々に登場する楽しさ。街角の映像が印象的に丁寧に使われていることも魅力です。
古い建物や路地のリアリティ、店構えや家具の手触り。人工的なセットでは味わえない時の経過が醸し出す陰影。一つのシーンを撮るために、丁寧なロケを重ねていることがひしひしと伝わってくる。ドラマ全体から、「町への愛」が漂ってくるのです。
「全体プロットはあえて書かず、各話のプロット打ち合わせもせず、毎回、ひたすら自由にシナリオ初稿から入らせてもらってます」(脚本・秦氏の公式ブログ)。
このドラマの最大の魅力とは、予定調和から自由なことかもしれません。失速することなく最後まで、めくるめく世界を描き出し走り切って欲しいと思います。