ライフ

安売りされる「夢」や「感動」 子供を勘違いさせるな!

競技には感動、アナウンスには幻滅?(写真/アフロ)

 女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子が、世の中の腹立つトピックをぶった斬る! 今回は、安売りされる「夢」や「感動」に怒りをぶつけます。

 * * *
 連日、熱戦が続く五輪。差し迫って集中している若者の目の、なんと美しいこと。世界レベルのすごさにため息が出ちゃう。だけど、テレビ画面から洪水のように流れてくる無神経なアナウンスに、耳をふさぎたくなるのも五輪。

◆出場がかなわなかった強化選手が1149人!

 そのひとつが、スキあらば出てくる「感動をありがとう」ってヤツ。これを言うタイミングを見計らい、ここぞという時はもちろん、そうでない時も出るわ、出るわ。感動をどこまでも安くする。

「こう言っておけば間違いないんじゃね」とテレビ各局が考えているとしか思えないよ。

 あと「夢はかなう」「夢の舞台」「私たちの夢をのせて」。大きな国際試合になると必ずだけど、4年に1度の五輪は特に“夢”の大バーゲンセール。

 まったくよく言うわ。日本の選手団は331人だけど、五輪強化指定選手1480人。ということは手の届くところまで行って、出場の夢がかなわなかった選手が1149人もいるんだよ。それ以外の名もなき選手たちを含めれば…。

 彼、彼女たちがどんな思いでテレビ中継を見つめ、「夢はかなう」を聞いているか、考えたことがあるんだろうか。

◆最近は目標でなく寝言を夢というらしい

 スポーツだけじゃない。いろんな“夢”が世の中にはびこり出したのは、1980年代前半からだったと思う。その頃から「夢があるから」と言えば、一目置かれると思い込む人が、私の周りに大量に出てきたの。

 その中で聞こえがよかったのが、イタリア留学の夢だね。有名なAV女優が、「イタリア留学資金のために」とひと肌もふた肌も脱いだけど、留学しないまま引退。

 女が「夢」と言えば、男は「ビッグになる」が決まり文句だったけど、どうも最近は、目標でなく、“寝言”を夢というらしいわね。ミュージシャンになりたい、ゲームクリエーターになりたい、お笑い芸人になりたい…。

 言うことは言うけど、具体的にそこに向かって研鑽を積むでなく、まったりとフリーターしているんだって。

 なんでこうなったか。もちろん原因はいろいろだろうけど、周りに聞いたら、小学校の教えも元凶のひとつらしい。「夢はかなう」を前提にして作文を書かせてるんだって。

 そんなホラを思い込ませてどうすんのよ。目標にたどりつくための地味な道筋を淡々と教えるべきなのに、「きみならできる」とあおってばかり。簡単にあおられたら、簡単にできると思い込むのが子供。ホントのところ、何かを成し遂げるのは一筋縄ではいかないし、頑張ったところで願った通りになりゃしない。それをごまかして、キラキラした未来だけ植えつけるのは罪悪でしかないと思う。

 で、私が学校で教わって真に受けなきゃよかったと今も思っているのは、「自分の意見をはっきり言いましょう」だ。おかげでバツイチになって、友達とは仲たがい。飲み屋では「もう帰れ」と言われ、あっという間に60才。もう、どうしてくれるの!

※女性セブン2016年9月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン