「でも、見ると真っすぐが走ってない。“まずはストレートを磨いてこい”といったんです。それで藤川は直球を3年磨いてからボクのもとに来た」(杉下氏)
安易に変化球に走らなかったことで、「火の玉ストレート」が生まれたというのである。杉下氏は最近の投手に物足りなさを感じるともいう。
「ストレートを決め球にするには、バッターの手元でボールが伸びて、バットがボールの下を通るようにならないといけない。163キロを投げる大谷翔平君(日ハム、2013年~)にしても、球速は十分でもストレート自体の伸びや制球力が甘い。もう少し手首で引っぱたくイメージで投げると、もっと素晴らしい投手になる」
コントロールの重要性は350勝投手・米田哲也氏も指摘する。稲尾和久(西鉄、1956~1969年、通算276勝)のスライダーを絶賛した米田氏は、スピードとコントロールの調和をポイントに挙げた。
「サイちゃん(稲尾)の高速スライダーは、本当にすごかった。高目で誘うようなことはせず、低目にしか投げなかった。フォアボールも少ないし、少しの曲がりでバットの芯を外すから、長打を打たれない。スライダーはコントロールが良くないと、ホームランボールになってしまうからね」
※週刊ポスト2016年9月2日号