ビジネス

スマホと連動するIoT家電 普及の鍵は何か

本格的なIoT時代の幕開けはまだ先か

 近ごろ、「IoT」という言葉をよく聞く。2020年460兆円、2025年900兆円など、莫大な世界市場規模が予測され、先般ソフトバンクグループが英半導体設計大手のARMホールディングスを買収した際、孫正義社長が「次のパラダイムシフト」と力説するほど世界中の企業が開発競争に凌ぎを削っている。

 IoTは「Internet of Things=モノのインターネット」の略称で、工場の機械や自動車、家電、ロボットなどあらゆる製品がインターネットに繋がり情報をやり取りすることで、ユーザーの利便性、効率性を極限まで高めていこうとする技術革新のことである。

 私たちの身の回りには、すでにIoTを先取りするような新技術が続々と登場している。

 ハンドルを握らなくても自動で運転するクルマ、部屋のゴミを探して掃除するロボット掃除機、外出先からスマホなどを使い、部屋の鍵を開閉したりエアコンのスイッチを操作したり、ペットや高齢者などの状況をカメラで見守ったり……。それらはすべて機器にセンサーが付いており、ネットワークで結ばれている。

 8月23日にはソニーと東京電力がIoT分野で手を組んだ。まだ今後のサービス詳細は明らかになっていないが、ソニー傘下で通信事業を担うソニーモバイルが何らかの機器を開発し、各家庭の電力を握る東電と協業することで、家電ごとの稼働状況を制御したり省エネに役立てたりするものと見られている。

 だが、今後あらゆるコンシューマー製品がIoT対応になったからといって、すぐに日々の生活や仕事が劇的に便利になるとは限らない。「本格的な普及には越えなければならないハードルはいくつもある」と指摘するのは、IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏だ。

「IoT家電はこれまでの製品のように『売り切り』ではありません。クラウドが動いていなければ何もできないうえ、同じネットワークサービスを10年、20年と継続的に行える事業主でなければ消費者の混乱を招くだけです。

 以前、スマホやネット経由で自宅の鍵を開ける『スマートロック』の運営をしていた新興企業が破綻してサービスを打ち切りましたが、ネットワークサービスを継続させるためのコストを誰が負担するのかという問題も、これからの大きな課題です。

 ユーザーから月額使用料を徴収するにせよ、いまは300円の課金だって慎重になる人が多い中、IoT家電がどこまでビジネスモデルとして成立し得るのか、メーカーもじっくりと検討していく必要がありそうです」(安蔵氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長。劉氏はポケットに両手を入れたまま(AFP=時事)
《“両手ポケット”に日本が頭を下げる?》中国外務省局長の“優位強調”写真が拡散 プロパガンダの狙いと日本が“情報戦”でダメージを受けないために現場でやるべきだったことを臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン