文書は最後に、日本の核武装に対する今後の対策として、日本の核問題の動向を密接に見守りつつ、国連を通じるなどして日本の核武装についてあらゆる手段を通じて反対するとしている。
昨年10月の国連総会では、中国の傅聡軍縮大使が「日本が保有する核物質は核弾頭千発以上に相当する」と指摘したうえで、「核セキュリティーと核拡散の観点から深刻なリスクを生んでいる。(プルトニウムや濃縮ウランなどの核物質)所有量は正当な必要量をはるかに超えている」と批判したが、傅大使の発言も中国側の日本の核武装阻止対策の一つといえそうだ。
さらに、阻止対策として、文書で注目されるのは「日本国内の反核勢力の支持」という言葉だ。「日本国内では反核の立場と発言力は一定の社会的基盤を築いている」として、「民間の反核組織に適当な支援を提供すべきだ」と主張。これは、中国政府が国内の民主化問題などで、海外勢力を批判する際、必ず持ち出す「内政干渉」に当たるのは明らかだ。
文書では、日本の民間組織に経済的支援をすべきだと主張しており、外交的な常識が欠如していると批判されても、抗弁できないだろう。
そして、最後の対策として、「核に関する各種突発事故に対応できるように準備しておくこと」を挙げている。「日本の核武装はわが国(中国)にとって、百害あって一利なし」と強調したうえで、中国国民に対して、放射能事故に対応できるよう教育をする必要があるとしている。
そのうえで、軍事的な訓練を通じて、「戦う準備をして、戦えば勝つ」ために、「軍内の各部署では訓練を強化し、有効な反撃を加えることができるように日ごろから備えておかなければならない」と強く主張し、文書を締めくくっている。つまり、間接的ながら、日本との戦争の準備をすべきとの主張だけに、穏やかではない。
●そうま・まさる/1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研 究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館刊)など著書多 数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館刊)。
※SAPIO2016年9月号