優子は「適齢期に付き合っていた彼を逃したから結婚していないのだ」と言う。それ以降も、出会いはいくつかあったが、1年以上続くような安定した付き合いには至らなかった。独身者との出会いは年々減っていく。「変わらなければいけない」と心から思ったのは、40歳になったときだった。
「何もしないではいられなくて、結婚相談所に登録しました。ここ最近は、いったいいつまで一人で生きていけばいいんだと、途方に暮れています。安定していない仕事ですから、将来の不安もある。自分で招いた結果であることは重々承知しているんですが、神様、あと一人だけ、出会わせてくださいという気持ちですね」
結局のところ優子は、それなりにモテる女性が、えり好みしているうちに独身のまま歳をとってしまったパターンなのだろう。
「本当は結婚しなくてもいいんでしょ? 一人で毎日楽しそうだよね? と言われることもあります。そりゃ、楽しく過ごすようには心がけていますよ。つまらなそうにしていたら、誰も寄ってこないでしょうし。でも結婚はしたいんです。それは最終的には世間体とか、食べさせてもらうためとかではなく、一人より二人がいいという純粋な気持ちだと自分では思っている。家族仲良く育ったので、そこは揺るがないんです」
そう言って、以前、読書会で知ったという本『あなたと読む恋の歌百首』(俵万智著)から、大好きだという歌を口ずさんだ。
「『いつかふたりになるためのひとり やがてひとりになるためのふたり』。浅井和代さんのこの歌が好きなんです。41歳で独身だなんて、自分でもイタイと思っていますが、落ち込んだときはこの歌を口ずさんで自分を励ましています」