◆一代年寄になりたい
奇妙なのは、18年ぶりの日本人横綱誕生を悲願とする相撲協会と歩調を合わせるように、白鵬まで稀勢の里の横綱昇進を後押ししているように見えることだ。その背景には、白鵬の“微妙な立ち位置”が関係しているとの見方もある。
引退後、年寄名跡を取得し、親方として相撲に携わっていくためには、帰化して日本国籍を取得する必要がある。
「このままだと白鵬は引退後に協会に残れず廃業するしかありません。そのため、特例で帰化せず一代年寄(※)となれるよう、故・北の湖理事長にはたらきかけてきた経緯がある。しかし八角理事長体制になってからも、協会は特例を認めない方針を貫いてきた。
【※注:一代年寄/現役時代の功績が著しかった横綱が引退した場合、相撲協会が一代限りで特別な年寄名跡を認める場合がある。「貴乃花親方」のように、名称には引退時の四股名がそのまま用いられる】
そうしたなかで起こったのが、稀勢の里の綱取りをアシストするかのような『謎の休場』です。白鵬は今回の件を通じて協会サイドの歓心を買おうとしたのではないかという声もある」(別の協会関係者)
とことん横綱昇進へのハードルを下げ続けた異様さが、様々な疑念を呼ぶ結果となっている。ただ、土俵上での稀勢の里がピリッとしない以上、どんな思惑も意味をなさない。何よりも、ファンは勝負弱い日本人横綱の誕生など望んでいないだろう。
※週刊ポスト2016年9月30日号