野党第一党の民進党(当時は民主党)は「共産党と連立は組めない」と呼び掛けを拒否したものの、共産党は積極的に野党取り込みをはかった。
まず今年4月の衆院北海道5区補選で独自候補擁立を見送って野党統一候補を支援。落選したものの、「楽勝」とみられていた自民党候補をギリギリまで追い上げた。原動力になったのは共産党の組織力だった。
そうやって「票の力」を見せておいて、7月の参院選では本格的な野党協力を呼び掛けた。
共産党はこれまで、国政選挙ではほとんどの選挙区に独自の公認候補を立て、選挙区で落選しても比例票を上積みさせる戦略を貫いてきた。
その方針を大転換し、32の1人区のうち香川選挙区以外の独自候補を下ろして統一候補に票を回したのだ(香川は共産党候補が野党統一候補となった)。民進党など野党は呼び掛けに応じ、その結果、11人が当選した。
だが、他の野党の候補に“タダ”で票を回したわけではない。共産党は選挙協力を、自民党に批判的な無党派層への食い込みに巧みに活用したのである。
民進党候補と自民党候補の事実上の一騎打ちとなった東北の1人区の共産党員はその効果を興奮気味に語った。
「独自候補を立てた以前の選挙の時は、有権者にビラを渡そうとしてもほとんど受け取ってもらえなかった。
それが今回は野党統一候補という看板だったからどんどん受け取ってくれた。こんなに手応えがある選挙は初めてでした」
※SAPIO2016年10月号