ビジネス

シャープ新体制とトルコ危機の共通点を大前研一氏が解説

経営コンサルタントの大前研一氏

 ICT(情報通信技術)が発達し、AI(人工知能)活用によって仕事や働き方が大きく変化している。その結果、これまで会社のピラミッド型組織の要とされてきたミドルマネジャー(中間管理職)がいらなくなりつつある。そうした組織と個人の関係の変化を象徴する出来事ともいえる、シャープの載正呉社長によるメッセージと、トルコのクーデター未遂事件におけるエルドアン大統領の危機対応について、経営コンサルタントの大前研一氏が分析、解説する。

 * * *
 シャープを買収した鴻海(ホンハイ)精密工業の副総裁からシャープの社長になった戴氏は、8月半ばの就任直後に社員向けホームページでメッセージを発信した。

 その内容は、まず「この出資は買収ではなく投資であり、シャープは引き続き独立した企業」とした上で、「私の使命は、短期的には、1日も早く黒字化を実現し、シャープを確かな成長軌道へと導き、売り上げ・利益を飛躍的に拡大していくこと」「中期的な使命としては、次期社長となる経営人材を育成・抜擢するとともに、積極果敢にチャレンジする企業文化を創造すること」と述べた。

 続いて具体的な経営戦略を詳しく説明するとともに「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」「コスト意識を大幅に高める」「信賞必罰の人事を徹底する」という三つの方針を打ち出し、信賞必罰の人事では「収益を上げれば、従業員に還元する」として、ストックオプションや営業インセンティブ制の導入により「高い成果を上げた従業員を高く処遇する体系にする」一方で、「挑戦を避け、十分な成果を出せない場合には、マネジャーは降格するなど、メリハリの効いた仕組みを導入する」と鴻海流の社内制度を導入する考えを示した。

 そして最後に「依然として赤字が続く厳しい経営状況にある。鴻海グループとしてはシャープに大きな投資をし、全面的に支援していくが、経営再建の担い手は皆さん一人一人。新しいシャープを自ら創っていく気概を強く持ち、それぞれの業務において主体的に変革に取り組んでほしい」と呼びかけ、「皆さんと私は仲間です。一緒に困難を乗り越え、早期の黒字化を果たしましょう!」と訴えた。

 シャープ社員の不安を解消し、やる気を引き出す実に素晴らしいメッセージである。シャープの中でも意識が高い社員たちは戴社長のメッセージを真摯に受け止め、その考えに共感して大いに歓迎したと思う。それほど心に響く内容だった。

 ただし、このトピックで最も重要なのは、ネットワーク時代は組織の全員がトップと同じ情報、同じ認識を瞬時に共有できるということだ。言い換えれば、インターネットがミドルマネジャーになるわけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン