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定番の冷凍炒飯 急成長の秘密は「具を減らす」にあり

商品開発グループの津島康二氏(左)と田中宏樹氏(右)

 食欲の秋。だが、少子化の時代、家庭むけ冷凍食品の需要は減少が続いている。その中で、異彩を放つヒット商品があることをご存じだろうか?

 前年比25%増の成長を見せ年間372億円(2015年度)を売り上げる。数字以上に驚くのが、「大きなのびしろがあり今後も成長できる」と、メーカーが胸を張るその姿だ。今どき明るい未来を堂々と語ることができるマーケットは多くはないはずだが。その商品とは「冷凍炒飯」。いったいどこにそんな勝機が潜んでいるのか? 作家の山下柚実氏がレポートする。

 * * *
 メーカー間の競争は激しい。ニチレイフーズの「本格炒め炒飯」と味の素冷凍食品の「ザ・チャーハン」がトップの座をめぐって激突している。株式会社日本アクセス主催の「10万人が選ぶフローズン・アワード2015」で冷凍食品部門大賞をゲットしたのは「ザ・チャーハン」。消費者によるウェブ投票と小売業バイヤーの投票によって決まるこの賞で、熱く支持された理由とは何なのか? 将来の可能性がどこに秘められているのか? 開発者を直撃した。

◆具材を減らす逆転の発想

「38年前、冷凍炒飯の先陣を切る形で弊社が発売した『五目炒飯』。もちろん当初はトップブランドでしたが、2001年以降は残念ながら二番手に甘んじていました」と、率直に語り始めた味の素冷凍食品株式会社商品開発グループ・津島康二氏(36)。首位を取り戻そうと必死に改善を重ねてきたが、なかなか差が埋まらない。その理由は何か。課題はどこにあるのか。消費者調査を開始すると「意外な」ことが見えてきた。
 
「弊社の『具だくさん五目炒飯』は、具材由来の味・風味が楽しめる、自信をもって提供してきた商品です。しかし消費者には、それとはまた別のニーズが潜んでいたのです」
 
 その「ニーズ」とは何か?
 
「食欲旺盛な若い男性たちが望むのは、一心不乱にレンゲを口に運んでいたら皿の上は空っぽ……という中華料理屋の味でした」と津島氏。

 具材は多くなくても炒めたての香ばしい炒飯が食べたい、という声が圧倒的に多かった。同時に「消費者の諦め」も知った、という。

「そうした外食と同じ味を食べたいけれど、自宅で再現するのは無理と、諦めていらっしゃる。不満に応える商品がどうしたらできるのか」

 中華料理屋の炒飯の具はシンプルだ。焼き豚、卵、ネギ程度。同社の従来路線「具だくさん五目炒飯」とは、いわば正反対のイメージ。これまで中身を多彩にして充実させてきた定番商品から、はたして具の「引き算」を試みることなんてできるのだろうか?

「たしかに、シンプルな具材の炒飯の提案を社内でしたとたん、反対の声があがりました。とはいえトップに負けている現実がある。素直にお客様の声に従って新たな商品作りへ踏み出すことが必要ではないかと」

「引き算」という英断が、この時固まった。

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