国内

石破茂氏 末期がんの父に託された田中角栄への「辞表」

石破茂氏が「父の死」に際して見たものは

 自分の「最期」について考えるとき、最も身近な“お手本”となるのは、両親が亡くなった時のことではないだろうか。厳しかった父、優しかった母はどうやって人生を締めくくったのか──。衆議院議員の石破茂氏(59)が、「父の死」に際して見たこと、学んだことを明かす。

 * * *
 参議院議員だった父の膵臓がんが発見されたとき、もうすでに手遅れの状態でした。鈴木善幸内閣で、父が自治大臣に就任してすぐの1980年秋のことです。

 その年の12月に手術を受けましたが、私は手術の前日、父に呼ばれて、「わしが死んだら財産をこう分けろ」などと懇々と説明されました。

 その日、父は最後に封筒を取り出し、「これを明日、田中のところに持っていけ」といいました。田中とは、父の親友だった田中角栄・元首相のことです。「これは何ですか」と聞くと、父は「辞表だ。わしは明治の人間だから、死んだ時に辞表が出ていなかったというのでは、天皇様に申し訳ない」といったのです。

 翌日、目白にあった田中邸を訪ねて辞表を手渡すと、田中先生は一瞬絶句して、「立派だ」とだけ口にしました。

 手術後、医師から「もって2年、短くて半年」と宣告された父は故郷の鳥取に戻り、市内の病院に入院。当時、三井銀行に勤めていた私は毎週末、父の見舞いのために夜行特急で鳥取に戻っていました。

 8月の終わり頃、母から電話がありました。その日の朝、父が「田中が見舞いに来てくれてとても嬉しかった。あれは夢だったのか?」と嬉しそうに話していたというのです。「死ぬ前に田中先生に会わせてあげられないか」と母に懇願され、恐る恐る目白に電話すると、田中先生は「わかった。すぐ行く」と短くおっしゃいました。

 当時、田中先生はロッキード事件で刑事被告人の身で、東京を離れるには裁判所の許可が必要でした。それでも先生は数日後には父を見舞ってくれました。公判中に地元・新潟に戻る以外で東京を離れたのは、その時が初めてだったそうです。

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン