日本以上に世論を気にする韓国検察やバックにいる政治家が、わが身可愛さに「ロッテ叩き」のポピュリズムに迎合した構図が見て取れる。折からの財閥批判へのガス抜きという側面もある。
韓国メディアが重光武雄氏(ロッテ創業者)ら在日企業家たちの母国への貢献の歴史を素通りするなか、国民の間に形成された反ロッテ感情は歪だ。
韓国ロッテグループは昨年夏、「日本企業」批判をかわすためだろう、ロッテワールドタワーの壁面に巨大な太極旗(韓国国旗)を掲げた。だがこれに対し、ネット上では「まさに日本企業。韓国人を騙そうとしている」「親日を隠すため」などの言葉が飛び交った。
私はロッテ取材を重ねるなかで、武雄氏が母国に莫大な投資を続ける傍ら、毎年5月には決まって、手土産をたくさん携え、慶尚南道の田舎を訪れていたことを知った。いま故郷の村は湖底に沈む。一年に一度、ダム開発で散り散りになった村民たちとともに亡き村を偲んでいたという。故郷出身の子弟に学資援助を行っていたこともある。
そんな人物が、「祖国」や「国旗」の意味を知らないなどと、韓国国民は本気で思っているのだろうか。
【PROFILE】李策●1972年生まれ。朝鮮大学校卒。日本の裏経済、ヤクザ社会に精通。現在は、北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNKジャパン」記者として、朝鮮半島関連の取材を精力的に行っている。
※SAPIO2016年11月号