そのGPIFや日銀は、個別の企業を精査して株式を買い入れたり、株価上昇に伴う利益確定売りをしたりしているわけではない。本来、株式市場というのは個々の企業の業績を分析・評価しながら選別して売買するものだ。だが、日銀とGPIFは企業を選ばず、インデックスに沿って広く薄く投資する「パッシブ運用」が中心なのである。これは目をつぶって大企業の株をまとめ買いしているようなものだ。
その結果、上場企業が四半期ごとに公表している業績報告はほとんど意味がなくなり、業績が低迷して株価が下がってもおかしくない企業まで、軒並み株価が上がったり維持されたりしている。日銀がETFを年間6兆円買うと、日経平均を2000円ほど押し上げる効果があるという試算もある。それが「底堅い」とされる理由なのだ。
公的マネーによる「官製相場」は、これまで世界でも成功例がほとんどない。たとえば中国は、政府が株式投資に対する税制上の優遇措置や年金基金による株式投資比率の拡大、大量の空売りをした業者の摘発といった様々な対策を講じて株価を維持しようとしてきたが、すべて裏目に出た。
ロシアの場合も、世界中で鉱物やエネルギーなどの資源関連株が暴落している時に、天然ガスのガスプロムや石油のロスネフチといった巨大国営企業の株を政府が買い支えようとしたが、全くうまくいかなかった。
官製相場が成功した稀な例は、リーマン・ショック後のアメリカくらいだろう。政府が無限にカネを注ぎ込んで、経営破綻の危機に直面したフレディ・マック(連邦住宅金融抵当公庫)やファニー・メイ(連邦住宅抵当公庫)を国有化して救済し、リーマン・ブラザーズ以外の証券会社や銀行はつぶさずにM&A(合併・買収)による生き残りを図って、5年ほどで事態を収束することができた。
しかし、基本的に官製相場が長続きすることはない。人為的な操作によってマーケットが歪んでいるということは、それだけ大きなリスクを抱えているということだ。