つまりそんなドラマや映画界をけん引してきたアラフォー・アラフィフ男優が新境地を開拓する作品が、この秋に重なったとも考えられる。

 冒頭から挙げてきた3本の映画はそれぞれ世界観は違えど、そうした中年男性を主人公として、一念発起して何かを始めたり、思わぬ形で人生が開ける再生の物語だ。『SCOOP!』では福山演じる都城は新人記者とコンビを組んでスクープを追いかけていくうちに、日本中が注目する大事件に巻き込まれていく。『グッドモーニングショー』では中井演じる澄田はひょんなことから、立てこもり犯への直接交渉にあたるハメに。『ボク妻』は織田演じる三村はいつ尽きるともわからない命に翻弄されながら、最後に、愛する妻のためにある企画を立案する。バスタオルが必要になるほど泣ける映画だ。

 いま日本では、中年のフリーターが急増しているという。35歳から54歳までの非正規労働者は、この15年間で2.5倍に増え、273万人あまり。「下流中年」という言葉もしきりにニュースで流れている。ここ10年、邦画界は少年マンガや恋愛小説を原作とするティーン向け映画が量産されてきたが、これからは“中年の再生”を描き、同世代にエールを送るエンターテインメントが増えていくのかもしれない。

 ちなみに、『SCOOP!』の週刊誌副編集長、『グッドモーニングショー』の澄田の妻、『ボク妻』の修治の妻としていずれも吉田羊が出演。まさに「秋の夜長に吉田羊」。それぞれどんな演技を見せてくれるのかハシゴするのも一興だ。

(内堀隆史/放送作家・コラムニスト/歌謡曲、演歌、ドキュメンタリー、トーク番組、旅番組/テレビ構成、急な執筆依頼も受けるのがモットー)

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