毎回の参加者は30代の課長クラスが中心だ。スマホを預け外部との連絡を断たれた環境で、1班約14名が大部屋で朝5時半起床、夜10時半消灯の共同生活を送る。「礼儀」「行動力」など14の課題を与えられた参加者はディスカッションや暗唱訓練で技術とノウハウを習得。名物の「駅頭歌唱訓練」では、富士宮駅前に一人で立ち、道行く人に構わずオリジナル曲を絶唱。「折れない心」と「やればできる自信」を養う。
「まず叩き込むのは、人間力の基本である礼儀礼節であり、大声で挨拶を反復練習します。大きな声が出るようになれば、自分の行動に自信が持てる。表現力を伸ばすスピーチや素読の訓練も行います」(元橋校長)
旧来の軍隊式訓練と異なるのは、指導者と生徒の間に一方的な命令・服従の関係がないこと。これにより、自主性と判断力、周囲との協調性が養われるという。
訓練のハイライトである「40km夜間行進」では、各班が手書きの地図を頼りに富士宮の山中を行軍する。
「午後3時に出発して3か所のチェックポイントを回り、戻ってくるのは深夜0時ごろ。リーダー、参謀、斥候など役割分担して、ヘトヘトになって“生還”すると参加者の顔つきがガラリと変わります。『自分だけ合格すればいい』との考えが改まり、周囲に助けられ、かつ自ら助言することの大切さが身につく。部下の育成を大切な任務とする、管理者として成長します」(元橋校長)
時代が変わり、スパルタ教育が疎まれる世になっても、厳格な訓練は形を変えつつますます必要とされているのだ。
※SAPIO2016年11月号