留学制度の運用を担う韓国・国立公州大学校発行の「募集案内」によると、韓国語や韓国文化、韓国史を学ぶ共通課程(週15時間)と専門課程(同)が設けられており、居住国での修学年数や希望に応じて志願できる。座学のほか、韓国各地を巡る「現地学習体験」や韓国の大学生との交流、ホームステイ、専門課程ごとの放課後学習サークル(語学、大学入試・就職準備など)が用意されている。
 
 ユン氏がインタビューしたのは同制度を利用した学生2名、その他の留学手段で韓国に滞在している在日の学生20名だった。ユン氏が語る。

「在日の歴史を知る人が優しくしてくれたとの証言もありましたが、正直、『韓国の人々が在日コリアンについてあまり知らない』という話が多かった。彼らはそのことに失望や衝撃を感じ、時に苛立ちを表していました」

 学生が出会った多くの人は「在日は韓国人ではない」という認識を直接・間接に表現したという。中には、差別的な表現さえあった。

「多くはありませんが、『サークルの部屋でチョッパリ(*3)という言葉を使いながら自分の噂話をしていた』『パンチョッパリ(*3)と言われた』などの証言がありました。本名と通名(日本名)を持っている子が、韓国人から通名しか呼んでもらえなかったというケースもありました」(ユン氏)  同様の体験はこれまで多くの著名人も明かしている。

【(*3)「チョッパリ」は豚足を意味し、「(豚の足のように見える)足袋を履く日本人」を意味する蔑称。「パン(半)チョッパリ」は在日韓国・朝鮮人への蔑称】

 劇作家・つかこうへい(故人)は、自著『娘に語る祖国』で、初めて韓国を訪れた際の経験をこう記す。 〈税関で、(中略)「おまえは韓国人のくせに、なんで祖国の言葉がしゃべれないんだ」と、パスポートを叩きつけられました〉

 サッカー元日本代表の李忠成は日本に帰化する前、U-19韓国代表合宿に参加した際、「なんで在日の奴が来たんだ」「パンチョッパリ」などの言葉を浴びせられた。李はテレビのインタビューでこう答えている。

「日本の人よりも韓国の人のほうが僕の味方をしてくれると思って韓国に行くわけですね。なのにそれとは真逆のことを言われ(中略)、韓国代表に落ちたということだけではなく、自分の世界観がすべて変わってしまった出来事の一つになりました」

※SAPIO2016年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト