ライフ

読書感想文 感動でっちあげを推奨せずなんでもアリにすべき

「読書感想文」、得意でした?(写真:アフロ)

「読書感想文」の是非について、ネットでも議論がある。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える読書感想文のあり方とはなにか。

 * * *
 読書の秋もたけなわなということで、ネット上でも「この秋にじっくり読みたいお薦めの本特集」的な記事が量産されている。これが10月27日~11月9日の読書週間に入ると、リアル書店、図書館、新聞紙上などなどでも、さまざまな読書フェアや読書推進企画が催され、本を読んでいる人は賢い人です、本を読まなきゃ人生損です的な空気がつくられる。

 そういうあれこれについて、冷めた態度で書き始めている当コラムのように見えるが、今でも私の主な収入源は紙の本の仕事だ。総務省の家計調査によると、意外なことに、9月から10月は一年のうちでも書籍への支出が少ない時期だそうである。出版市場活性化のために、ありとあらゆる策は打ってほしいし、微力ながら私も援護射撃をしたい。

 しかし、である。読書推進運動の一環で、学校が児童や生徒に読書感想文を書かせようとするのには、あまり賛成できない。感想文というのは、自分の心の中に生じた変化を言語化してまとめる、くらいの意味だと思うが、心が変化することを前提にする読書というのは本末転倒だと思うからである。

 はっきり言って、心の中に変化が生じる、つまり感動する読書体験なんて、そうそう滅多にない。まず、多くの人の心を動かすだけの力を持った本は僅かだし、書評家や図書館司書や本読みさんたちが名作を選書して勧めても、勧められた側の心のコンディションがうまく合わなければ、感動はできないのである。

 だから、読書して感動できた本やその体験はとても希少価値があるのだけど、読む前から感動を前提として本を読ませるのはナンセンスだ。意味がないので、子供たちの読書感想文のほとんどは、あらすじと感動したポイントを書いて「私も主人公のような人間になりたいです」みたいな、心にカケラもないことを添えて終わりみたいな、虚しいものになるのである。

 いや、そんな程度のやっつけ感想文でさっさと片付けちゃえる子供は、まだ健全だ。なんだかなあと思うのは、感動ポイントでかなりな変化球を投げてきて、私は他の人とは目のつけどころが違うんです、と自己ピアール、締めも「さあ、私たちも飛び立つ時だ。好奇心に突き動かされ、前人未到の地に到達したこの主人公のように」とか、くさーいポエムを書き散らしてしまう国語優等生たちだ。その手の感想文が賞を取っちゃったりする世界の存在も気持ち悪い。

 そういう書き方をすれば、文科省や選考委員のおじ様おば様たち喜ぶから、と分って書いている子供が賞を取る。それはひとつのマーケティングと戦略なので、将来の商売にも役立つかもしれない。まあ、勝手にやってくれ。問題なのは、そういう国語優等生も片づけちゃえ系の子供たちも、おかげで読書が嫌いになってないか、という懸念である。

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン