仲間たちも手のひらを返したよう。私がみんなの飲み代を払っていた頃は、「ダンナって、要はヒモでしょ? 離婚したほうがいいよ」と言っていたのに、夫の自殺を知ると、「浮気なんかするからよ」と言っていたとか。
一度入ったトンネルは、もがくほどに暗闇に迷い込んで、いつの間にか、結婚していたのと同じ7年の歳月が流れていました。
その間、私の夢のなかにSくんは毎日現れました。後ろ姿だけの日。悲しい顔で何かを言いたげな日。私のうつ病も、少し快方に向かったかと思えば、また悪化する。抗うつ剤が手放せません。
でも先日、ちょっとしたことがありました。父親を6才で見送り、13才になった長男が何げなく言ったんですよ。「父ちゃんって、母ちゃんの子供だったんじゃね?」って。
「そうかも」
とっさに返したあと、スッと胸の底に何かが落ちたような。その夜のことです。 なんと夢の中でSくんが、私に笑いかけて手を振ったんですよ。すごく晴れやかな顔で。そしてそれから私の夢に出てきません。
昨日は、いちばん苦労をかけてしまった長男が、お笑い番組のつまんないギャグに、声を上げて笑っていたんです。私もつられて笑いながら、悪いことばかりじゃないかなと、そんな気持ちになりました。
〈了〉
〈本稿は、「自らの半生を見つめ直し、それを書き記すことによって俯瞰して、自らの不幸を乗り越える一助としたい」という一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました〉
※女性セブン2016年11月17日号