国際情報

比イスラム過激派アブサヤフに「69歳日本人」の衝撃

家族とは10年以上会っていない(右がI氏)

 公安関係者が「誌面に絶対掲載しないこと」を条件に、本誌記者に一枚の写真を提示した。

 そこに写っていたのは一人の日本人男性だった。彼は銃弾や手榴弾を装備した戦闘服を身にまとい、自動小銃カラシニコフ(AK‐47)を構えている。白髪の交じった長いあご髭をたくわえ、日焼けした精悍な顔の男は、深いシワの刻まれた目尻を下げて、薄笑いを浮かべている──。公安関係者はこう続けた。

「今年撮られたと思われるこの写真を入手したのは7月頃だ。“フィリピンのIS(イスラム国)”と呼ばれるアブサヤフのメンバーの集合写真を拡大したもので、この日本人も組織の一員だと思われる。驚くのは、彼が2010年にフィリピンで拉致されたI氏である可能性が非常に高いということ。

 これまで安否不明だったI氏が、テロ組織の一員になっていたことを示唆する写真だと考えている」

 I氏の拉致事件は、当時日本でも報じられていた。報道によれば、広島県出身のI氏は、2010年7月にフィリピン南部スールー州パングタラン島でイスラム過激派組織とみられる約10人の武装集団に拉致された。犯行声明や身代金要求などはなく、犯人グループの狙いは不明のままで、その後の消息はわからなくなっていた──とされる。

 イスラム過激派組織に拉致された日本人は、これまで悲惨な末路を辿っている。2014年、元ミリタリーショップ経営者の湯川遥菜氏、ジャーナリストの後藤健二氏は、共にシリアでISに拘束された。ISは日本政府に対し2億ドルの身代金を要求。しかし解放交渉は成らず、2人は首を斬られて殺された。

 しかし、同じくイスラム過激派に拉致されたはずのI氏は、湯川氏や後藤氏とは状況がまったく異なる。I氏は拉致事件から約2週間後、拉致現場から約40キロ離れたスールー州ホロ島で姿を目撃されている。ホロ島はアブサヤフの活動拠点だ。前出の公安関係者はこう語る。

「I氏は拉致された時、イスラム名も持っていたといわれる。イスラム教に改宗し、現在はアブサヤフと同行できる立場にあるのかもしれない。I氏が戦闘員となり外国人の拉致、誘拐に関与している可能性はないか注視している」

 かつて日本に妻子がいたI氏だが、マニラで知り合ったフィリピン人ホステスのJさんと1988年に結婚、2人の息子をもうけた。中部ビサヤ地方でレンタルビデオ店を経営していたという。が、1990年代後半にI氏はJさんの元を去り、ミンダナオ島のディポログに引越し鍼灸院を開業した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン