国内

熱海「貫一お宮像」に「暴力肯定・助長の意図なし」プレート

『金色夜叉』の山場を再現した「貫一お宮の像」

「来年の今月今夜、この月を僕の涙で曇らせてみせる」舞台やドラマでお馴染みのこのセリフ。言わずと知れた『金色夜叉』の名シーンだ。作品の舞台である静岡県熱海市の海岸にはその場面を再現した主人公・貫一と許嫁だったお宮の銅像があり、観光名所となっている。最近、この銅像に異変が起きた。フリーライターの清水典之氏が報告する。

 * * *
 観光地・熱海を象徴する存在とも言える貫一お宮の像に、今年3月、1枚の金属プレートが設置された。この縦10cm×横40cmという、小さなプレートが物議を醸している。

 そこには日本語と英語で、「物語を忠実に再現したもので、決して暴力を肯定したり助長するものではありません」と書かれている。貫一がお宮を足蹴にするシーンを銅像で再現したことについて、“弁解”しているのだ。

 それが『金色夜叉』の名場面(*)と知る者からすれば、違和感を持つのが普通である。30年以上前(1985年)に建立された像に、なぜ今さらこんな弁解が必要になったのか。

【*『金色夜叉』の主人公・間貫一は貧乏学生だった。許嫁だった鴫沢宮(お宮)はある時、大富豪に見初められ貫一と別れることに。お宮の旅先である熱海まで追いかけ、問い詰める貫一。貫一は、「来年の今月今夜、この月を僕の涙で曇らせてみせる」「月が曇ったなら、何処かでお前を恨んで、今夜のように泣いていると思ってくれ」と言い、許しを請うお宮を足蹴にして去る。物語の山場であるその場面を再現したのが「貫一お宮の像」である。】

 今年9月2日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)がこの問題を取り上げた。番組では、熱海市が東京五輪を見据え、外国人観光客に女性蔑視と受け取られないよう、理解を求めるために設置したと説明。

 それに対し、出演者の一人でコメンテーターの玉川徹氏は、「『日本も100年前は男性がこうやって女性に暴力を振るうような国でした』って入れればいいんじゃないですか」と語った。さらに、日本在住54年のC・W・ニコル氏のコメントとして、「男性が女性を蹴ることは許せない。たとえ、文学作品の一部だとしても許せない。撤去したほうがいい」という、極端とも思える意見も伝えていた。

 しかし、こうした意見を受け入れると、スペイン内戦を描いたピカソの「ゲルニカ」を展示するには、「この作品は戦争を助長するものではありません。昔はこうして殺し合うのが当たり前でした」などという注釈が必要になる。女性が殺人の被害者になるようなテレビドラマも、女性への虐待を助長するとして、放送禁止である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン