山形に住み、地元の小説教室に通ったことから、作家の道へと進んだ柚月氏。『検事の本懐』、『孤狼の血』など話題作を続々発表し、「原点は子供の頃に読んだシャーロック・ホームズ」という氏は、大事件から地方紙の片隅の小さな事件まで、それがなぜ起き、どんな人間の真実が隠れているのか、行間に目を凝らしてしまうと語る。

「例えば今回扱ったような事件が起きると酷い、許せないと私も思う。特に弱者の犠牲には心が痛みますが、私は女だから、それがどんなに惨いかを書けるのかもしれない。私がもし男で、同じことをする可能性があったら、怖くて書けないでしょうし、人間こそがミステリーだという思いが、常に私の出発点なんです」

 愛犬を娘〈幸知(さち)〉に託し、新婚旅行以来の旅先に四国を選んだのは、事件被害者や殉職した仲間を弔うためだった。香代子とは県北部〈雨久良村〉の駐在時代に先輩〈須田〉の紹介で結婚して32年。以来仕事一筋で口の重い神場を明るく支えてくれた妻は久々の2人旅が余程嬉しいのか、山道を鼻歌まじりに進んでいく。

 だが4番札所まで参拝を終えた時のこと。宿のテレビでは群馬県尾原市に住む〈岡田愛里菜ちゃん〉7歳が遠壬山の山中から遺体で発見されたと報じ、神場の中で苦い記憶が甦る。それは16年前、県警の捜一時代に手がけた〈金内純子ちゃん殺害事件〉だった。同じ遠壬山で少女の遺体が発見されたこの事件で県警は、〈八重樫一雄〉36歳を逮捕。本人は無実を主張したが、体液のDNA鑑定が決め手となり、懲役20年の実刑が確定していた。

 この鑑定を覆しかねないある事実を、神場は妻にも幸知と交際中の元部下〈緒方〉にも秘密にしてきた。しかし16年前と似た犯行に彼の心は騒ぎ、巡礼の道すがら、緒方や現捜一課長〈鷲尾〉と連絡を取り、遠距離推理に挑むことになる。

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