そこで考えたい問題がもうひとつある。「麺をすする音」の定義である。果たして誰もが同じ音を想起して「快」「不快」を論じているのか。

 否、である。

 僕自身は他人が麺をすする音について、特に気にしてこなかった。ラーメン屋でも蕎麦屋でも音を立てて麺をすするのは当たり前だと思っていたし、自分も音を立てて麺をすする。それもできれば格好よくすすりたい。だから「ザッ」と一気に短くすする。イメージとしては竹ぼうきで小さな砂利を掃くときの音に近いかもしれない。ちなみに、やたらに轟音を立てるのも気がひけるので音はやや小さめだ。

 ところが最近、蕎麦屋やラーメン店で「ズゾズズズ……ゾゾーッ!」というように長々と麺をすすっている人がいる。そういう人に限って音を立てるのを良しとしているのか、すする音量も大きい。アレは確かに不快だ。日本人の麺の食べ方がヘタになっているような気すらする。

 「麺をすする」というのは非常に個人的な行為だ。家庭でも伝承されて来なかったろうし、「音を立てる/立てない」という個人の趣味・嗜好にまで踏み込む以上、もちろん学校などの教育の現場でも教えられることはない。そうして今日も「ズゾズズズ……ゾゾーッ!」という音はラーメン店や蕎麦屋にこだまする。

 すする側がどんなに「粋」だと思っても、不快だと感じる人はいる。ましてや、麺好きですら嫌悪するような音は、「さもありなん」というマインドの形成に一役買う。概念としての存在も確認できない「ヌーハラ」の既成事実化には、度を越した不快音も一役買っていた。「ヌーハラ」というよくわからない言葉を見かけるたびに、そんなふうに思えて仕方ないのだ。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン