そこで考えたい問題がもうひとつある。「麺をすする音」の定義である。果たして誰もが同じ音を想起して「快」「不快」を論じているのか。

 否、である。

 僕自身は他人が麺をすする音について、特に気にしてこなかった。ラーメン屋でも蕎麦屋でも音を立てて麺をすするのは当たり前だと思っていたし、自分も音を立てて麺をすする。それもできれば格好よくすすりたい。だから「ザッ」と一気に短くすする。イメージとしては竹ぼうきで小さな砂利を掃くときの音に近いかもしれない。ちなみに、やたらに轟音を立てるのも気がひけるので音はやや小さめだ。

 ところが最近、蕎麦屋やラーメン店で「ズゾズズズ……ゾゾーッ!」というように長々と麺をすすっている人がいる。そういう人に限って音を立てるのを良しとしているのか、すする音量も大きい。アレは確かに不快だ。日本人の麺の食べ方がヘタになっているような気すらする。

 「麺をすする」というのは非常に個人的な行為だ。家庭でも伝承されて来なかったろうし、「音を立てる/立てない」という個人の趣味・嗜好にまで踏み込む以上、もちろん学校などの教育の現場でも教えられることはない。そうして今日も「ズゾズズズ……ゾゾーッ!」という音はラーメン店や蕎麦屋にこだまする。

 すする側がどんなに「粋」だと思っても、不快だと感じる人はいる。ましてや、麺好きですら嫌悪するような音は、「さもありなん」というマインドの形成に一役買う。概念としての存在も確認できない「ヌーハラ」の既成事実化には、度を越した不快音も一役買っていた。「ヌーハラ」というよくわからない言葉を見かけるたびに、そんなふうに思えて仕方ないのだ。

関連記事

トピックス

和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン