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朝廷のテロか経済戦争か 忠臣蔵を巡る3つの異聞

仇討ちにまつわる意外な物語(写真:アフロ)

 現在放送中のNHKドラマ『忠臣蔵の恋』も好評だが、「仇討ち」には忠義の心が生み出した熱き人々の物語があった。それが歴史を変える原動力となっていた。日本でも最も有名な仇討ちにも、意外な物語が存在する。

 江戸城松之廊下で吉良上野介を赤穂藩主・浅野内匠頭が斬りつけたことに端を発する赤穂事件。幕府に切腹させられた主君の無念を晴らすため、大石内蔵助ら四十七士が吉良邸へ討ち入り、仇討ちを遂げる物語は「忠臣蔵」として後世に語り継がれた。しかし、この事件には、現在まで論争が続くほど多くの謎がある。

 ◆四十七士が朝廷の放ったテロリストだった

 元禄15年12月14日(1703年1月30日)、大石内蔵助ら四十七士は仇敵・吉良邸へ討ち入り本懐を遂げた。「義士」の快挙として有名な仇討ち事件だ。その討ち入りに、京都御所の天皇と関白が関係していた、とする説がある。歴史研究家で作家の泉秀樹氏が語る。

「討ち入りで誰が得をしたのかを考えると自ずと見えてきます」

 吉良上野介は、幕府と朝廷を繋ぐ役どころである「高家旗本」の筆頭。いわば幕府の要求を突きつける役目であり、天皇家には敵対視されていたという。関白・近衛基煕の『基煕公記』に刃傷事件の一報を聞いた東山天皇の様子が「御喜悦」と記されていることから、上野介と朝廷との関係が上手くいっていないことが読み取れる。

 そして討ち入りを率いた大石内蔵助と朝廷は、実は深い関係にあった。その証明となるのが、浪人の身となった際に内蔵助が隠棲した「山科閑居」だという。

「山科は御料と呼ばれる朝廷の土地。その土地を内蔵助に斡旋したのが、叔父で近衛家に仕えていた進藤源四郎です。さらに内蔵助の4代前には近衛家出身の 志茂が大石家に嫁いでいる。つまり、大石家と近衛家は姻戚なのです」(泉氏)

 また、討ち入りのための情報収集や資金面でバックアップした遠縁(曾祖父の弟の長男)の大石無人は一時、近衛家に居候をしていたと言われている。

「討ち入りの資金は、無人が基煕を通じて入手した朝廷の資金だった可能性があります」(泉氏)

 四十七士は朝廷の放ったテロリストだったと泉氏は見ている。

「吉良を討つことは幕府の裁定に逆らうことです。絶対に失敗は許されないと考えた内蔵助が、基煕を頼るのはごく自然なこと。基煕も襲撃が成功すれば、天皇が悦び、自らの地位が堅固なものになると積極的に支援したと思います」(泉氏)

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