国際情報

大前氏、トランプ氏が1期目途中で政権を投げ出す可能性指摘

米国内では激しい抗議デモが発生している Reuters/AFLO

 トランプ政権でアメリカの外交政策が大きく方針転換すれば、日本もそれに対応しなければならなくなる。すでに在日米軍の駐留経費を日本が全額負担しろと言っている。また、NATO(北大西洋条約機構)について「加盟国はアメリカの気前の良さに感謝していない」と批判してきた。アメリカがNATOを離脱すれば、ヨーロッパの安全保障は大きく揺らぐ。大前研一氏が「新たなアメリカ」との向き合い方を指摘する。

 * * *
 アメリカと中国の関係は当然ギクシャクするだろう。トランプ氏は、アメリカの雇用を奪ったのは中国だ、中国製品に関税をかける、中国に出て行ったアメリカ企業を呼び戻すと言っている。これは米中関係にとっては相当なマイナス要因だ。

 本当にトランプ氏が公約通りのことを実行したら、中国は反発して保有しているアメリカ国債を売り始める可能性がある。「売るぞ」と脅しただけでも、アメリカ国債は暴落するだろう。これはトランプ氏が考えていない最大のリスクである。

 ただし、アメリカ国債を大量に保有しているのはアメリカではなく日本と中国と中東産油国だから、返り血を浴びるのは日本と中東産油国だ。アメリカの場合、日本と違って国内に自国の国債を買っている金融機関などはほとんどない。自分たちの借金の大半を外国にバラ撒いているのだ。

 ことほどさように我々はトランプ外交が生み出す様々な世界秩序の変化を想定しなければならないわけだが、その一方でトランプ大統領の“命”は1期4年で終わる可能性が高いだろう。なぜなら、中国製品などに関税をかけたり、海外からアメリカ企業を呼び戻してアメリカ人に雇用を与えたりすれば、物価に大きな上昇圧力がかかってハイパーインフレになるからだ。

 したがって大統領就任後のトランプ氏は、次々と公約の修正を余儀なくされてギリシャのチプラス首相のように国民の支持を失うか、フィリピンのドゥテルテ大統領のように何が何でも本質的に変わらないというスタイルを貫くか、どちらかの状況になるだろう。

 私は、おそらくチプラス化するのではないかと思う。もしかすると、1期目の途中で二進も三進もいかなくなって政権を投げ出してしまうかもしれない(その場合の大統領はキャラのない副大統領マイク・ペンス氏になる)。日本はそういう事態も想定しながら、(言ったことを分刻みで変えていく)トランプ次期大統領と付き合っていかねばならない。

※SAPIO2017年1月号

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン