中野さんは6才の時に父をがんで亡くした。充分に死を理解していたわけではないが、周りが悲しむから悲しいことなんだと幼心に感じた。当時母は34才。2つ上の兄と中野さんを懸命に育てていたはずだが、その苦労を中野さんや兄に見せたことはなかったという。
「父が亡くなって、東京から、母の姉のいる京都へ引っ越したのですが、そこで祖父母も親戚も、みんな家族のように暮らしたので、そういう意味では恵まれていたかもしれません。でも引っ越した時、母が『口中が口内炎になった』と言ってたことがあったので、それはやっぱり大変だったんでしょうね。母はずるいことを良しとしないので、そういうことをするとすっごく怒りました。芯なしのトイレットペーパーを投げられ、よけたらガラス窓が割れました(笑い)。
でも母はぼくがどんなことをしても受け止めてくれていた気がします。それが無償の愛というんですかね。決して自分を裏切らないと思わせてくれるのが母なのかなって思うんです」(中野さん)
りえはこれまでも愛娘に仕事場を見せてきたが、今作の試写にも連れてきた。新聞のインタビューにその時のことをこう明かしている。
「(娘は)泣いていました。感受性豊かなようで、親のしていることが簡単ではないと理解し始めている。
幼いのにねぎらってくれたり。『マミーが頑張っているから、私も頑張るんだ』と自分なりの目標を見つけたり」
夫と別れ、その背中を娘に見せているりえ。娘は、最近「女優になるんだ」と言い始めているという。その愛は確かに届いている。
※女性セブン2017年1月1日号