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2016.12.17 07:00  週刊ポスト

最小0.0005gの部品と格闘する国内最高峰腕時計の製作現場

選ばれし職人が組み立てを行なう雫石高級時計工房

 ガラス張りの明るい部屋の中で、白い防塵服と防塵帽を身につけた二十数人が、顕微鏡やルーペを覗いたりモニターをチェックしたりしながら、小さな工具片手に作業に集中している。

 一人ひとりに与えられたスペースは広く、漆塗り、欅製の作業机は大きく、重厚感がある。12世紀に起源を持つ地元岩手の伝統家具の岩谷堂箪笥の机は、作業者一人ひとりの体型に合わせて作った特注品で、作業者のネームプレートがつけられている。

 工場と言うよりは、先端分野の研究室。それでいて手作り、手作業の温もりも感じさせる──それが雫石高級時計工房である。

 セイコーグループの腕時計の生産拠点である盛岡セイコー工業(岩手・雫石町)。部品の製造から製品の組立までを自社で行なう、「マニュファクチュール」と呼ばれる世界でも珍しい存在だ。

 セイコーが世界に誇る高級腕時計グランドセイコー(以下GS)には、ゼンマイで動く機械式、水晶振動子を使ったクオーツ式、その2つをミックスした独自の「スプリングドライブ」という3つのタイプがあるが、最も職人の熟練技能がモノをいう調整作業が必要な機械式を作るのが、ここ雫石だ。

 セイコーの機械式腕時計は、1960年代には時計の精度を競う国際コンクールで上位を独占したほど、世界的に見てもレベルが高い。雫石高級時計工房は2004年、その完成品組立までを行なう工房として工場の一角に誕生した。時計職人の精鋭中の精鋭が集まる場だ。

 GSの中で最も大きいモデルでも、ケースなどを除いたムーブメント部分の径は3cm弱、厚さは6.5mm。その小さな空間に実に二百数十の部品が集積されている。

 工房の熟練職人がそれらの部品の組立、調整、針やケースなど外装の取り付け、バンド付けなどの工程を分担する。なかでも最も重要なのがヒゲゼンマイの調整だ。ヒゲゼンマイとは、腕時計の中で往復回転運動をするテンプ(振り子時計における振り子に相当)に付けられた渦巻き状の部品のこと。

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