ビジネス

トヨタ&スズキ、歴史的提携に秘められた豊田家と鈴木家の絆

トヨタとスズキの歴史的提携に秘められた絆

 2016年の日本経済界を揺るがした大企業をめぐるニュースの多くには、「創業家の強い影響力」という共通点があった。時に成長を押し上げる原動力になり、時に抵抗勢力になり、時に経営を危うくする。「畏るべき創業家」を解剖する。

 自動車業界最大のニュースは10月12日に発表されたトヨタとスズキの業務提携だった。記者会見の席上、スズキの鈴木修会長(86)は経緯についてこう明かした。
 
「今回こうしてトヨタとの協業に向けて協議を進められることになり、大変ありがたい。豊田章一郎名誉会長にまず相談させていただき、豊田章男社長にも協業に関心を示してもらい、大変感謝している」

 豊田章一郎名誉会長と鈴木修会長は、普段から食事を共にする仲で、鈴木会長は5歳上の章一郎名誉会長(91)を「お兄さんみたいな存在」と語っている。

 トヨタグループには軽自動車を主力とするダイハツがすでにある。業界内では今回の提携を疑問視する声も大きく、2016年1月に日経新聞が「提携交渉」をスクープした際には、両社とも揃って否定した。それから9か月、両社が大きな決断をした背景には創業家同士による決断があったのである。

 実はトヨタがスズキに手を差し伸べたのは初めてではなく、今回が3度目だ。1950年に全国で労働争議の嵐が吹き荒れたとき、スズキは資金繰りが悪化。そこで、創業者の鈴木道雄氏は、豊田自動織機の石田退三社長を頼り、資金2000万円の融資を受けて乗り切った。

 2度目は1975年。当時は大気汚染が社会問題化し、排ガス規制が毎年強化されていた。そんななかでスズキの2サイクルエンジンは1975年規制をクリアするのが困難になり、当時専務だった鈴木修氏が豊田英二社長に協力を求めた。ダイハツからエンジンの供給を受けられるようになり、スズキは難を逃れた。

 こうした経緯があるため、1978年に鈴木修氏が社長に就任した際、父親で2代目社長の鈴木俊三氏から「何かあったらトヨタに」と言われたという。現社長で息子の鈴木俊宏氏も、大学卒業後にトヨタグループのデンソーに入社し、“自動車マン”の基礎を学んだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト