トヨタがスズキに手を差し伸べるのは、両社に共通項が多いからかもしれない。トヨタの源流である豊田自動織機の創業者・豊田佐吉氏は静岡県湖西市の出身で、大工で生計を立てながら納屋で自動織機の研究を始めた。一方、スズキの創業者、鈴木道雄氏ももとは大工で、浜松市に機械製作会社を設立している。
両社とも浜名湖周辺の遠州地域にルーツがあり、提携会見で豊田章男社長は「もっといいクルマづくりに向けた『やらまいか』の提携」と述べた。「やらまいか」は「やってみよう」の遠州弁である。
創業家の持ち株率が極めて低いところも共通している。豊田家は2%、鈴木家はわずか0.1%。佃モビリティ総研代表の佃義夫氏はこういう。
「総会の議決を左右するほどの株を保有していないのに、両家とも社員から支持され、経営を任されている。
トヨタでは創業家外の社長が3人続いたこともあるが、2008年のリーマン・ショックで赤字転落すると、この危機を乗り切るには豊田家の力を借りるしかないと豊田章男氏が擁立され、組織の一体感が高まり、5年で黒字転換しました」
一方の鈴木家は、娘婿に経営を任せるなどして、世襲批判をかわしながら経営の安定化と成長を促した。中興の祖と呼ばれる鈴木修会長は、満を持して息子の俊弘氏を後継社長に据えた。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号