ライフ

「院内感染が怖いから病院に行きたくない」の選択は正しいか

「病院に行くから病気になる」は本当か(イメージ)

〈病院に行くから病気になるんです〉との見出しで『週刊現代』が危険を訴えたのが、「院内感染」の問題である(7月16日号)。

 病院内で病原菌、ウイルスが発生し、抵抗力が落ちた入院患者を中心に、院内に出入りするすべての人が感染し得るというもので、記事では10年に帝京大学医学部附属病院で患者35人が死亡した院内感染の事件がクローズアップされている。院内で数種類の抗生物質に耐性を持つ「薬が効かない不死身の菌」多剤耐性菌が発生したことが原因だという。

 最近でも、11月に久留米大病院で同じく多剤耐性菌による院内感染が発生し、1人が死亡したばかり。「院内感染が怖いから病院に行きたくない」と考える人が増えてもおかしくない。

 しかし、この選択は本当に正しいと言えるのだろうか。大阪医科大学附属病院・感染対策室室長の浮村聡氏はこう指摘する。

「多剤耐性菌は、病院内に限らず、介護を受けている人や病気でない人も保持していたり、街中など日常の空間にも存在します。だから病院に近づかなければ耐性菌のリスクから逃れられると考えるのは間違いです。

 ある程度の免疫力がある人なら、多剤耐性菌に触れても病気を引き起こすことはない。病院を遠ざけることで、逆に体の不調のサインを見逃すリスクのほうが大きいと思います」

 ただし、その記事でも触れているとおり、高齢者や抗がん剤による治療を受けている患者など、免疫力が著しく落ちている場合は、耐性菌が危険な存在になることは間違いない。そのために重要なのは院内感染が起きにくい病院を選ぶことである。

「院内の感染防止対策の評価を国が行ない、充実していれば診療報酬を上げる『感染防止対策加算』という制度があります。同制度で最上位のクラス1に認定された病院は、専従の院内感染管理者が配置されるなど、対策の行き届いた医療機関であることを証明しています。各病院のホームページで開示されている情報なので確認してみてください」(同前)

 ほかに、菌が沈着する床の清潔さや、医師や看護師の手袋交換、アルコール消毒の頻度なども確認すべきポイントだという。そうした対策を病院が怠ると、「病院に行くから病気になる」という最悪の事態を招く。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン