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熟女 当事者が渋々自覚するのは早くて40代後半か

 逆に、昔に比べて使い勝手がよくなったのが「妙齢」です。「妙」は「たえ」とも読み、「たえなる調べ」など、素晴らしい、すぐれているという意味。かつては20代ぐらいまでの若い女性を指す言葉でした。しかし現在は、30代や40代、何なら50代以上の女性に対して、「素敵なお年頃」というニュアンスで使われています。「妙」を分解すると「少女」になりますが、そこは気にせず「微妙なお年頃」の「妙」と解釈すれば問題ありません。

「熟女」も、言葉が発生した当初から大きくニュアンスが変わっています。1980年代前半にAV業界でこの言葉が使われ始めたころは、おもに30歳前後を指す言葉でした。しかし現在では、30代はもちろん40代に向かって、おだてるつもりで「ボクは○○さんのような熟女が好みなんです」と言ったら、二度と口をきいてもらえなくなるでしょう。

 当事者が「私もそろそろ熟女の範疇かな」と渋々ながら自覚するのは、早くて40代後半ぐらいです。だからといって、50代以上なら熟女呼ばわりしても大丈夫だと思ったら大間違い。たとえ本人が「私なんてもう熟女だから」などと自分を熟女呼ばわりしたとしても、笑いながら「そうだね。アハハ」と同意している場合じゃありません。「熟女っていうより、女盛りのほうがピッタリかな」と返すことをオススメします。

 ちなみに、1983(昭和58)年に五月みどりが、中森明菜の「少女A」に対抗(?)して「熟女B」という曲を発売したときの年齢は43歳。このエピソードを持ち出しつつ、40代前半の女性に「だから君はもう立派に熟女なんだよ」と説得を試みるのは、悪いことは言いませんからやめておきましょう。大切なのは歴史的な経緯や客観的な事実ではなく、言葉がまとっているイメージです。

「中年」や「オバサン」は、たとえ冗談でもけっして使うまいと心に決めたほうがいいでしょう。女性に対してではなく、自分に対して「もう押しも押されもせぬ中年だからな」とか「オジサンはついていけないよ」などと自虐的に使う場面もあります。しかし、同年代の女性がその場にいるときに使うと、間接的にその人を「中年呼ばわり」「オバサン呼ばわり」していることになりかねません。中年危うきに近寄らず、です。

「高齢者」の定義に関するニュースをきっかけに、2017年を生きていく上で大切な問題について考えることができました。提言自体にはあやしい下心もにじんでいますが、元はと言えば「高齢者」のみなさんが、日頃から呼ばれ方に必要以上に敏感でいてくださるおかげです。亀の甲より年の劫、老いたる馬は道を忘れず、年寄りの言うことと牛の鞦(しりがい)は外れない……。

 老人や年寄りを称賛する言葉をじっくり噛みしめましょう。こうした言葉も当事者に直接言ったら怒られそうなので、こっそり心の中だけで。


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