国際情報

2017年はパクス・アメリカーナが公式に終わる年となる

ユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏 Dirk Eusterbrock

「G2」と言われたアメリカも中国も、その他の国々も、世界でリーダーシップを発揮することができない──そんな「Gゼロ」の時代をかねて予見していたイアン・ブレマー氏。同氏に新たな1年の国際社会の見通しを、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が聞いた。

 * * *
 2017年は「パクス・アメリカーナ」(アメリカの力による平和)が公式に終わる年となるだろう。ドナルド・トランプ氏の大統領当選と統治によりアメリカは自国が世界でも特別な役割を果たすとする「アメリカ例外主義」を放棄し、アメリカが世界には欠かせないとする考え方をも排除するようになるだろう。

 こうした展開は全世界に大きな衝撃を与える。中国が経済分野で国際的に劇的なほど指導的役割を果たすようになる。あるいは米欧関係が大幅に弱まる真空状態が生まれるかもしれない。東南アジアのアメリカの同盟国や友好国を中国に近づけるかもしれない。中東全体を傷つけることにもなりかねない。アメリカとロシアが温かい関係となるかもしれない。

 アメリカの国際的な影響力は実はオバマ政権時代に衰え始めていた。欧州連合(EU)が弱くなったことも私たちは知っていた。中国がアメリカの代役のような役割を演じ始めた。ロシアも安全保障面でのアメリカの代替策を供し始めていた。一方、トランプ氏の外交政策と政策面での一貫性や整合性に欠ける外交チームの登場によってアメリカの国際的影響力の衰退はさらに加速されるだろう。

 ただしアメリカ国内をみると、トランプ氏が政権の主要ポストに選んだのは産業、金融、ビジネスの振興を強く支持する人物たちだ。議会の両院も共和党多数だ。その結果、トランプ政権は経済成長を促進し、減税を進め、インフラへの支出を増し、規制を整理する能力を高めることができる。

 この展望は現実的かつ重要だ。アメリカの株価が高値を示していることもそれが理由だと言える。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン