三重・宇治神社で野口みずきが奉納した絵馬
◆御利益は「金メダル」
その坂原氏が足腰の神様として「筆頭格」に挙げるのが、京都市内にある護王神社だ。訪ねてみると、境内には狛犬ならぬ“狛猪”が建っていた。
「主祭神の和気清麻呂公が都から大分の宇佐に向かう途中で災難に遭われた際に、300頭もの猪が現われて清麻呂公をお護りしたと伝えられています。
その時、不思議にも清麻呂公が悩んでおられた足のけがが治ったという。この故事にちなんで、明治23(1890)年に拝殿前に猪像が建てられました。とくに足腰の健康保持、けが病気の回復に格別の御利益があると信仰されています」(護王神社の本郷貴弘・禰宜)
参拝するスポーツ選手は数多く、毎年12月に京都で開催される全国高校駅伝の大会前には、出場チームの多くが必勝祈願に訪れる。
俳優・船越英一郎(56)が2004年に椎間板ヘルニアで入院した際は、妻の松居一代(59)が代理で参拝。回復後には船越自身も御礼参りにきた。
「そのことがワイドショーなどで伝えられたこともあり、全国的に知られるようになりました」(本郷氏)
同じく和気清麻呂を祀る岡山県の和氣神社も、交通の便が悪い立地ながら、足腰で悩む人が大勢訪れる。
「深刻な症状で毎年祈願にいらっしゃる方もいますが、予防の意味で気軽に来られる方がほとんどです。お正月は初詣を兼ねた『足腰の神様』祈願で京阪神からの日帰りバスツアーの参加者も多かった」(小森国彦・禰宜)
マラソンの野口みずきがアテネ五輪前に参拝し、見事金メダルを獲得したことで一気に有名になったのが、伊勢神宮の内宮のすぐそばにある宇治神社だ。地元では古くから「足神さん」として親しまれている。
かつては伊勢参りを無事にできたお礼をする参拝者も多かったが、「野口みずきさんがこちらのお守りをつけてオリンピックで走られた頃から、マラソンや駅伝、競輪、サッカーなどの選手が来られるようになりました。もちろん足腰がだんだん弱ってきた高齢者の参拝も多いですよ」(禰宜)という。
参拝するには石段を50段ほど上がらなければならないが、「この石段をのぼるのがいいリハビリになっている」(70代参拝者)という人もいた。