◆車椅子がいらなくなった
関東では、昨年連載が終了した人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』によく登場した亀有香取神社が「足腰の神様」を祀っていることで知られる。
「古くから旅の安全を祈願して、境内にある道祖神にわらじを編んで奉納する習わしがありました。主祭神は勝負開運の神様ですが、御社殿には参らずに道祖神様だけお参りされる方も増えています」(唐松範夫・宮司)
手相占いで知られる芸人・島田秀平(39)が「御利益がある」と紹介したこともあり、モデルや女性タレントが訪れて注目を集めた。
「重い足の病気を抱えていた10代男性が、最初は車椅子で家族に付き添われて来られ、その時はとても落ち込んだ様子でした。しかし、その後『無事に回復しました』と自分で歩いて報告に来られました」(唐松氏)
ステンレス製のわらじ(500円)に願い事を書いて奉納するという一風変わった祈願法があるのが、群馬県館林市にある子神社。宮司がいない小さな神社だが、知る人ぞ知る“足腰スポット”だ。
「健脚だった祭神の大黒様がわらじを履いて旅をしていたという伝説から、この祈願法が生まれました。年明けから1週間で、奉納されたステンレスのわらじは150足を超えました。元マラソン選手の高橋尚子さんも祈願に来たことがあるそうです」(氏子代表)
10年ほど前に参道にスロープがつけられ、高齢者や足の不自由な人も参拝しやすくなっている。
わらじといえば、埼玉県飯能市にある子ノ権現天龍寺は、重さ2トンもある世界最大の鉄わらじがあることで有名だ。飯能駅から車で40分、携帯の電波が「圏外」になるような山奥にあるが、見晴らし処から眺める秩父の山々は絶景。
「この山を登ろうとしたときに山賊に火を放たれ足腰を火傷したが、無事に治癒した子ノ聖という僧が昇天する際に『腰より下を病める者、一心に祈らば、その験を得せしめん』という誓いをたてたことから、足腰守護の寺として信仰されています」(櫛笥亮安・住職)
子ノ権現天龍寺は檀家を持たず、寄進だけで賄っている寺だが、年間で10万人ほどの参拝者が訪れる人気だ。前出・坂原氏がいう。
「『病は気から』というように、お参りするという行動を通じて気持ちを切り換え、安らぐとともに用心もするようになる。それが効果となって現われ、『御利益があった』となるのでは」
全国の「足腰の神様」を行脚することで、足腰はむしろ軽くなるということか。
※週刊ポスト2017年1月27日号