万が一気がついたとしても、泣き寝入りせざるを得ない女性側の心理も容易に想像がつく。眠り込んでいたので自分自身に記憶がなく、目撃者もいない。相談すれば、そんな怪しいモニターに参加したほうが悪いと、被害者なのに非難されるかもしれない。実際に、このニュースが報じられた際、ネット上には「女の方がバカ」といった意見が飛び交い、被害者は泣き寝入りを強いられたのだ。
また、出会い系サイトで知り合った女子高生とのわいせつ行為をおさめた映像を販売して逮捕された男もいた。「生活費のためにやった」というその男は現職の奈良市市議会議員だったが、サイトでは偽名を使って女子高生を誘い出していた。映像での女子高生にいやがる様子は見当たらなかったと捜査関係者はいうが、まさか少女たちは自分の姿がネット販売されるとは想像もしていなかっただろう。
これら販売されている映像の多くは、正直なところできがよいとは言えず、正当な手段で作成されていないことをうかがわせるものが並ぶ。にも関わらず、個人でも一千万単位の利益があげられるため新規参入者が絶えない。
なぜ、稚拙な動画でも人気を集められるのか。日本の大手AVメーカー係者によれば、無秩序化すればするほど、ユーザーから支持されるといった傾向が、ネット上に広まりつつあるためだという。
「日本で商品として販売されるアダルト映像の場合、DVDなどのパッケージでもネットでも、基本的には審査などを経ないと販売できません。一方で、審査などおかまいなしに配信可能な脱法サイトは、コンテンツ提供が手軽にできる一方、販売単価が低くなる。その場合、どういう形でもいいから多くの女性を捕まえて、より多くの映像を撮って数をこなさないと儲からない。逆に、制作のプロでなくても撮影さえできれば金儲けのチャンスがあると考えて売る側にまわる人間がいてもおかしくない」
結果として、己の性欲を解消しつつ、あわよくば小銭まで儲けたい卑劣な者たちが、脱法サイトを利用して動画を配信するようになっていった。
たとえば、街中ゆく女性のスカートの中の隠し撮り、トイレに仕掛けたカメラ映像に特化した「盗撮モノ」を専門に配信するサイトや、一対一のライブチャットだからと気を許して露出した女性の姿をこっそり録画し、映像を勝手に録画し配信するサイトなどが続々とオープンしている。
また、派遣型風俗店利用者の男性が、女性との情事を隠し撮りし、自身の顔にだけモザイクをかけた映像をネットで有料販売していた事例もある。同じホテルをよく利用し、カメラアングルも同じ隠し撮りで定期的に更新されていたため、シリーズものの人気コンテンツとなっていた。風俗店で働く女性でも、そんな隠し撮りを承諾する女性が何人もいるとは思えない。
動画を見ていた視聴者も、それが不当な手段で撮影されたものだと承知していたはずだ。
このような無秩序な空間は、いったんできてしまうとなかなか消滅しない。本人が知らない間に動画がインターネット上にさらされ、犯罪被害者となってしまう。事件の捜査や裁判が終わっても、ネット上にいったんさらされた映像や画像は、転載やダウンロードなどで半永久的に残り続ける。被害者にとって、事件に終わりはやってこないのだ。
自分で身を守るのが肝心、といった単純論では被害を防げないレベルまで、脱法サイトを悪用した金儲けが広まっているのが現実だ。こういった無軌道なあり方を許さないことはもちろんだが、一時の誘惑に負けないよう、そして騙されることのないよう、正しい知識と適切な危機感を持つことが女性にも求められている。