国内

「なめんな」ジャンパー問題 小田原市に欠けていた視点

ケースワーカーに黒いジャンパーは似合わない(写真:アフロ)

 神奈川県小田原市の生活保護を担当するケースワーカーの職員らが、「保護なめんな」などとプリントしたジャンパーを着て生活保護家庭を訪問していたことがわかり、問題化した。フリーライター・神田憲行氏が考える。

 * * *
 問題となったジャンパーは黒色で、胸にエンブレムとともに「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」、背中に英文で「私たちは正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはくずだ」と記されていた(訳文は朝日新聞1月18日より)。

 英文だから気付かれにくいと考えたのかも知れないが、エンブレムは「悪」の漢字に×印がつけてあるなど、かなり威圧的である。これで生活保護家庭を訪問していたという。彼らは「ゴーストバスターズ」ならぬ「不正受給バスターズ」気取りだったのではないか。ケースワーカーとは生活保護を求める人々の相談に乗り、自立を支援する仕事のはずだが。

 ジャンパーを作ったのは07年、生活保護の支給を打ち切られた男性が市役所で暴れて職員たちを負傷させる事件がきっかけだった。どんな事件だったのか、当時の朝日新聞の記事をかいつまんで紹介する。

 事件を起こしたのは無職の61歳の男性だ。市役所2階の窓口を訪れて、「生活保護を打ち切られた」「保護費を入れろ」と騒ぎ、応対した職員を杖で殴り、駆けつけた2人の職員にカッターナイフで切りつけた。杖で殴られた職員は軽い打撲、カッターナイフで切りつけられた職員は腹と手に軽いケガを負った。61歳の男性は傷害の疑いで現行犯逮捕されている。

 生活保護が打ち切られたのは、この男性が最後に保護費を受け取ったあとに住所不定になり、受給要件を失ったためだ。市はこの男性に「住所がなくなると保護費の受給ができなくなる」と電話や面談で4回説明し、市でアパートを用意したが、指定の日に来ず連絡が取れなくなったという。それで生活保護費の廃止措置が取られた。

 事件後、士気を高めるために当時の担当課長の発案でジャンパーを作るアイデアが出され、職員たちが自費で購入したという。デザインの意図は神奈川新聞の報道によると「自分たちの自尊心を高揚させ、疲労感や閉塞感を打破するための表現だった」という。

 4回も説明してアパートまで用意したのに来ず、それで暴れてカッターで切りつけられるとは、市の職員の憤りは理解できる。しかしそれでもなお、このような士気の高め方は間違っている。また、このようなジャンパーを作成して着用して仕事に従事することは、自らの仕事を貶める行為だと考える。

関連記事

トピックス

月9ドラマ『絶対零度』で主演を務めた沢口靖子
《60歳とは信じられない美姿勢》沢口靖子、“本人も継続を断念”した『科捜研の女』完結後は…各局が熱視線を送る理由
NEWSポストセブン
1985年優勝の胴上げ投手・中西清起氏(左)と2003年と2005年のV戦士である片岡篤史氏(撮影/太田真三)
藤川阪神、連覇への課題は「レフトとショート」の固定 ドラ1・立石正広、2位・谷端将伍をどう起用するか【中西清起氏×片岡篤史氏・OB対談】
週刊ポスト
「成人の日」に番組MCを務める萩本欽一と明石家さんま
《ダウンタウン松本不在の影響も》欽ちゃん84歳、さんま70歳、ナンチャン60歳…高齢MCの特番が「成人の日」の集結した背景 
NEWSポストセブン
秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《不敬どころの騒ぎじゃない》秋篠宮家・佳子さまも被害に…AIを用いた性的画像の被害が世界的問題に 専門家が指摘「男女問わず人権侵害」
NEWSポストセブン
冬のオシャレに欠かせないダウンジャケット(写真提供/イメージマート)
《続く高級ダウンブーム》「ワケアリ」をおしゃれに着こなす人たち メルカリで中古品買って”汚れにファンデ”塗る人や”におっても洗わない”人も
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《もう家族でハワイに行けない…》“1.5億円の脱税疑惑”の宮崎麗果、“ESTA取得困難”で恒例の「セレブ旅行」は断念か SNSで「深い反省」示す
NEWSポストセブン
元子役のパイパー・ロッケル(Instagramより)
「1日で4億円を荒稼ぎ」米・元人気子役(18)が「セクシーなランジェリー姿で…」有料コンテンツを販売して批判殺到、欧米社会では危機感を覚える層も
NEWSポストセブン
元旦に離婚を発表した吉岡美穂とIZAM(左・時事通信フォト)
《3児の母・吉岡美穂がIZAMと離婚》夫のために「“鬼嫁キャラ”を受け入れた妻の想い」離縁後の元夫婦の現在
NEWSポストセブン
2026年1月2日、皇居で行われた「新年一般参賀」での佳子さま(時事通信フォト)
《礼装では珍しい》佳子さまが新年一般参賀で着用、ウエストまわりに“ガーリー”なワンポイント 愛子さまは「正統的なリンクコーデ」を披露
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
〈抜群のスタイルとルックスが一変…〉中国人美女インフルエンサーが示唆していた「潘親方(特殊詐欺グループのボス)」との“特別な関係”とは《薬物検査で深刻な陽性反応》
NEWSポストセブン
SNS上で拡散されている動画(Xより)
「“いじめ動画”関係者は始業式に不参加」「学校に一般の方が…」加害生徒の個人情報が拡散、YouTuberが自宅突撃も 県教委は「命にかかわる事態になりかねない」《栃木県》
NEWSポストセブン
女優・羽野晶紀と和泉元彌の母の節子さん(右・時事通信フォト)
《女優・羽野晶紀“嫁姑騒動”から24年目 の異変》元日に公開された和泉節子さんとの写真から伝わる「現在の距離感」
NEWSポストセブン