ビジネス

落合陽一氏「テクノロジーの進化でテレパシーが現実となる」

バーチャル・リアリティは「現実」に近づいている AP/AFLO

 囲碁や将棋などの世界で「人工知能と人間の対決」を見る機会が増えた。テクノロジーのさらなる進化は、この世界に何をもたらすのか。世界最先端の研究を続ける筑波大学助教・落合陽一氏が、近未来の姿を解説する。

 * * *
 劇的に進化する人工知能と人間の関係は、どんどん変容していくでしょう。注目すべきは、「ポスト・トゥルース」への対応です。

 これはオックスフォード英語辞典が昨年のワード・オブ・ザ・イヤーに選んだ言葉で、「客観的な事実(トゥルース)が世論形成にあまり力を持たず、感情への訴えかけの影響のほうが大きい」という意味です。

 とくに政治の世界では、客観的な真実が重要ではなくなり、感情に訴えることが大事になってきました。イギリスのEU離脱や米国のトランプ大統領誕生などが、それを物語っています。

 もっと噛み砕いて言えば、「感情に訴える虚構(フェイク)が真実を圧倒する世界」がやってきたのです。

 実際に、フェイスブックなどのSNSでは、デマであっても、感動的な美談はどんどん拡散されます。逆に、客観的な情報はエモーショナルじゃないから、真実でも広まらない。ネット空間はどんどん虚構が増えていきます。

 人工知能はこれに対抗するために、フェイスブックやツイッターなどで投稿されたデマを自動検知して、「このニュースは嘘の可能性があります」という警告を出すようになるでしょう。

 今の人工知能は、真実かそうでないかを予測できる能力をすでに持ち合わせています。ただし、コンピュータ側が「デマチェッカー」機能を備えても、人間側がそれを使うかというと疑問です。真実ではないとわかっても、あえて感情に訴えるデマに乗ってしまうそれが、ポスト・トゥルースの人間たちです。

 今は多くの人間が、感情的な願望で物事を判断しています。人工知能のほうが先に未来を知っているのに、人間は「そんなの信じたくない」といって耳を貸さない。

 アメリカ大統領選でも、人工知能はいち早くトランプ勝利を予測していたのに、人間たちはギリギリまで「最終的にはヒラリーが勝つ」と思い込んでいました。人間の頭の中では、虚構と真実が逆転しているのです。

関連キーワード

トピックス

62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン